日本衛生動物学会全国大会要旨抄録集
第63回日本衛生動物学会大会
セッションID: B06
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第63回日本衛生動物学会大会
宮古島のつつがむし病患者発生地に生息するカニ寄生ツツガムシ
*高橋 守三角 仁子亀田 和成藤田 博己角坂 照貴高田 伸弘平良 勝也山本 正悟安藤 秀二川端 寛樹北野 智一岡野 祥御供田 睦代高野 愛矢野 泰弘及川 陽三郎本田 俊郎岩崎 博道平良 セツ子岸本 壽男
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抄録

2010年8月と10月に、宮古島本島および最北部に位置する池間島で、野鼠捕獲用トラップにカニ類が入っていた。精査の結果、オカガニにデリ-ツツガムシによく似たツツガムシが寄生していた。本種はナンヨウカニツツガムシEutrombicula (Siseca) haematocheiri Suzuki1976に酷似するが、背甲板がさらに大きいのが特徴である。本種のオカガニへの寄生率は57%(4/7)、平均寄生数46.5個体(3から111個体)であった。ヤシガニ(9個体)やオカヤドカリ(4個体)には寄生していなかった。宮古島に近い西表島と黒島の陸産カニ類も調べた結果、西表島(10月16日)のベンケイガニへの寄生率は100%(7/7)、平均寄生数32.1個体(2から90個体)であったものの、ミナミオカガニ(5個体)、オオアシハラガニモドキ(1個体)、ミナミスナガニ(1個体)には寄生していなかった。また黒島(10月11日)ではオカガニへの寄生率は83%(5/6), 平均寄生数188個体(3から492個体)であったが、ムラサキオカガニ(1個体)には寄生していなかった。一方トカラ列島小宝島で11月5日に採集したカクレイワガニには原記載のナンヨウカニツツガムシが寄生していた。ちなみに寄生率は57%(4/7)、平均寄生数1.5個体(1ないし2個体)であった。しかし11月25日のカクレイワガニ17個体全てに寄生は見られなかった。なお採集されたツツガムシのうち223個体をリケッチア有無の検査に供したがすべて陰性であった。今回の調査により、沖縄県の陸産カニ類にも、カニに特異的に寄生していると思われるツツガムシが広く分布していることが示唆された。このツツガムシが鈴木(1976)による奄美産のE. haematocheiriと同一種かどうかについては今後さらに検討したい(2010年厚労科研費によった)。

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