日本衛生動物学会全国大会要旨抄録集
第63回日本衛生動物学会大会
セッションID: B26
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第63回日本衛生動物学会大会
日本脳炎ウイルス媒介蚊の遺伝的多様性
*新井 智沢辺 京子浜田 雅史多屋 馨子津田 良夫冨田 隆史小林 睦生岡部 信彦
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抄録

日本脳炎は日本脳炎ウイルスによって引き起こされる蚊媒介性ウイルス疾患である。日本脳炎ウイルスを媒介する主要な蚊は、東アジア一帯に広く生息するCulex tritaeniorhynchus (コガタアカイエカ)であるが、近年、海外から日本脳炎ウイルスが侵入してきている可能性が示唆されており、その侵入方法(経路)として媒介蚊の飛来による持ち込みが疑われている。そこで、日本を含む東アジア地域のコガタアカイエカの多様性を明らかにすると共に日本に生息するコガタアカイエカと海外に生息するコガタアカイエカの遺伝的な違いを明らかにすることを試みた。 サンプルは、日本、ベトナム、カンボジア、フィリピン、インドネシア、中国、台湾で捕獲され、形態学的にコガタアカイエカもしくは近縁種として分類されたものを使用した。比較遺伝子としてITS遺伝子およびミトコンドリア遺伝子を用いた。 ITS遺伝子を用いた比較では、タンパク質をコードする遺伝子とは異なりRNAの二次構造に由来したクラスタリングを必要としアライメント方法が難しく、比較遺伝子とするには困難が予想された。そこで、他生物でも多く使用されているミトコンドリア遺伝子COI領域を比較に用いた結果、日本に生息するコガタアカイエカと国外のコガタアカイエカをはっきりと区別することが可能であることが判明した。しかも、これまでコガタアカイエカと分類されていた種の中に少なくとも2種類の遺伝子型が存在していること、成虫の形態的特徴では同定が難しいとされるCulex vishnui, Culex pseudovishnuiについても鑑別が可能であることが明らかになった。 謝辞 本研究は、厚生科学研究費補助金(H20-Shinko-ippan-009)や他の研究費で実施した。

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© 2011 日本衛生動物学会
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