日本衛生動物学会全国大会要旨抄録集
第63回日本衛生動物学会大会
セッションID: B28
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第63回日本衛生動物学会大会
タイのAnopheles barbirostris complex5種のPCRによる同定法
*大塚 靖S. SuwannamitA. SaeungW. Choochote
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抄録

Anopheles barbirostris complexはタイにおいてはマラリアのsuspected vectorとして知られていたが、1997-8年のSa Kaeo Provinceでのマラリア流行では伝播に関わっていたと考えられている。近年、交配実験、染色体、塩基配列の比較により、この中にはAn. barbirostris A1, A2, A3, A4, An. campestris-likeの5種類が存在することが分かった。これら5種の成虫は形態では区別することが難しいため、野外で採集した成虫を同定するための方法が望まれていた。今回、rDNA ITS2領域にプライマーを設定してPCR増幅を行い、増副産物の長さの違いにより5種を区別することを試みた。An. barbirostris complexのITS2は他のAnophels種に比べ長く、種間にも長さの違いがあることから、まず、ITS2全体を挟むプライマーも用いてPCR増幅を行った。その結果、A1, A2, A3, A4, campestris-likeの増副産物の長さは、それぞれ1.8k, 1.7k, 1.0k, 1.6k, 1.6k bpであった。A4とcampestris-likeはほぼ同じ長さであったため、この2種でITS2内の異なる箇所にannealingするプライマーを用いてPCR増幅を行った。A4とcampestris-likeで0.4kと0.5k bpと異なる長さの増幅産物を得られ、2回のPCRで5種類を区別することが出来た。この方法により、タイでのAn. barbirostris complex 5種の分布調査が容易になるとともに、再びAn. barbirostris complexが媒介する流行が起こったときに媒介種を特定する助けにもなる。

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