日本衛生動物学会全国大会要旨抄録集
第64回日本衛生動物学会大会
セッションID: A32
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第64回日本衛生動物学会大会
新潟県佐潟湿地におけるイナトミシオカの吸血生態に関する研究
*津田 良夫金 京純
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抄録

新潟県佐潟湿地は日本海沿岸部で報告されている唯一のイナトミシオカの生息地である.2007年から継続している生態調査の結果,本種はアカイエカとならぶ佐潟湿地における優占種であることが分かっている.2011年6月と8月に本種の吸血生態に関して行った現地調査の結果を報告する.雌成虫は昼でもさかんに吸血のために飛来する.生息地のヨシ原で10分間の人囮採集を行い 1分毎に飛来個体数を記録したところ,飛来パターンはシマカ類と類似しており,初期の 5分間に飛来個体数は多く,その後徐々に減少し10分間経過しても飛来する個体が確認された.昼間の吸血行動はヒトスジシマカなどと基本的には同じ様式であると考えられる.本種はドライアイストラップでも多数捕獲されることから,発生源からどの程度離れた場所まで探索飛翔しているかをトラップによって調べた.幼虫発生源のヨシ原内,水辺,ヨシ原と耕作地の境,周辺の畑地に生えている樹木にドライアイストラップを設置して捕獲個体数を調べた.捕獲個体数はヨシ原と水辺でトラップ1台あたり平均41~56雌と多く,ヨシ原と耕作地の境および畑地では平均 3~5雌と有意に少なかった.ヨシ原のトラップ設置場所から畑地までの距離は約189mであることから,イナトミシオカの探索範囲は幼虫発生源の周辺に限られ,恐らく200m程度であると推測された.

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© 2012 日本衛生動物学会
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