日本衛生動物学会全国大会要旨抄録集
第64回日本衛生動物学会大会
セッションID: A34
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第64回日本衛生動物学会大会
蚊由来原虫遺伝子解析で明らかとなった国内の鳥マラリア原虫の遺伝的多様性
*江尻 寛子佐藤 雪太金 京純津田 良夫村田 浩一湯川 眞嘉
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抄録

これまで,我々は日本における各種蚊の鳥マラリア原虫の保有状況を明らかにし,蚊と鳥類間における原虫伝播を示してきた.しかし検出された原虫系統の分布に関しては,国内における地域特異性の有無を含めて未だ充分に解明されていない.そこで今回,各調査地の蚊から検出された鳥マラリア原虫の分子系統関係を解析し,国内における原虫の遺伝的多様性の特徴について検討した.2005~2010年,北海道から南西諸島までの国内各地で捕集した蚊から鳥マラリア原虫mtDNA cyt b部分領域をPCRにより増幅し,決定した塩基配列を既知の原虫系統と比較して分子系統関係を解析した.塩基配列の相同性が98%以上かつ分子系統分類上同じクラスターに位置した場合を同一の原虫系統とし,検出された蚊の種類および捕集地域との関連性について考察した.日本各地の蚊から検出された鳥マラリア原虫は10系統に分類され,東北から沖縄まで広範囲に分布する系統や,関東および沖縄の島嶼地域にそれぞれ限局して存在する系統が認められた.また,媒介蚊は宿主鳥類に比べて行動範囲が狭いため,蚊が保有する地域限局的な原虫系統は当該地域においてendemicに感染環が成立している可能性が高い.よって,日本各地の蚊における原虫保有状況をモニタリングすることにより,病原体の分布状況の変化を検出できる可能性が示唆された.

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© 2012 日本衛生動物学会
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