2011年3月11日に発生した東日本大震災では,大きな津波が発生し,福島県,宮城県,岩手県,青森県など被災4県の約 400Km2の地域に大きな被害をもたらし,地表面に存在した建築物の多くは流出した.瓦礫の処分が進み,破壊された建築物は解体され,基礎のコンクリート部分を残して整地された.しかし,これら建築物跡地の基礎に,多数の浄化槽,浄化槽関連のタンク等の構造物が点在し,高率に水が溜まっていた.そこで,これらの構造物を対象に蚊幼虫の発生状況調査を7月から9月にかけて宮城県および岩手県の被災地で試みた.また,塩類濃度と蚊幼虫の種類との関係も検討した.浄化槽等の塩分濃度は 0-2.5%と幅があり, 0.1-2.5%の水域にはトウゴウヤブカが,0-1.4%の水域にはアカイエカ,ヤマトヤブカ,シナハマダラカが発生していた.現在,被災地にはほとんど人が住んでいない.周辺住民からは蚊の刺咬被害の報告はないが,復旧工事関係者から夜間蚊に刺されるとの情報を得た.大量発生した蚊の多くは越冬したと考えられ,今春から夏季にかけて蚊の大量発生に対する抜本的な防除対策が必要になると考えられる.