日本重症心身障害学会誌
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教育講演2
重症心身障がい学講座特任教授に就任して
松葉佐 正
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2010 年 35 巻 2 号 p. 212

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抄録
このたび、熊本大学医学部附属病院に重症心身障がい学講座が開設されました。これは熊本県による寄附講座で、全国で初めてのものです。この講座の目指すものと、具体的な事業内容について述べたいと思います。 講座の目標は、[1]NICU・小児救急医療機関に入院中の小児の在宅移行の促進と、[2]地域関係諸機関の連携による在宅重症児の支援体制構築です。事業内容としては、(1)在宅重症児に関する調査研究と、(2)関係諸機関の間のネットワーク構築、(3)在宅重症児支援施策についての検討と、県との協同による国への政策提言が挙げられます。具体的に述べますと、 (1)在宅重症児に関する調査研究、では、①短期入所(レスパイト)の潜在的需要を推定するために、県内の重症児施設・重心病棟での短期入所の実績を調査する、②熊本県阿蘇地区における重症児の在宅療養の潜在的需要を調査する、また、同地区の在宅障害児のための環境を調査する、③県内の重症児の実情を知るために、阿蘇以外の一地域を対象とした実態調査を行う予定です。 (2)関係機関の間のネットワーク構築、では、①重症児関係者会議を開催する(医療、看護、行政、教育等の分野から参加)、②地域の重症児支援を行う関係者に対する研修を実施する、③医師会・小児科医会等との連携による研修会を実施する予定です。 (3)在宅重症児支援施策についての検討、では、①広域対象の短期入所(特に「遠隔レスパイト」)の実現、②ITを用いた在宅重症児ケア(阿蘇地区をモデルとした)の検討と研修会の開催、③NICU入院児の親教育のためのガイドラインの作成を行う予定です。 これらに加えて、(4)重症心身障害の専門医養成・育成が求められています。そのために、大学病院における重症児医療に関する研修を、若手医師や学生に行う予定です。 学術集会では、活動の成果の一部を提示できると思います。 経歴: 鹿児島県出身 昭和59年、熊本大学医学部卒業、同小児科入局 平成3年、熊本大学医学部医学研究科博士課程卒業、医学博士 平成3年、重症心身障害児施設くまもと芦北療育医療センター勤務 重症心身障害医療に従事し、重症児に関する厚生労働省委託研究を遂行 平成22年、熊本大学医学部附属病院重症心身障がい学講座勤務 日本重症心身障害学会理事 社会福祉法人志友会理事 主な著書:「重症心身障害療育マニュアル(分担執筆)」 趣味:読書、水泳
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© 2010 日本重症心身障害学会
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