抄録
はじめに
近年、重症心身障害児(者)の栄養管理において半固形化栄養剤注入食が導入され、様々な有用性が注目されている。今回当施設でも半固形化栄養剤を導入したところ、導入2,3カ月頃より体重減少をきたした3症例を経験した。各症例の経過を報告し、臨床的意義の考察も試みる。
対象と経過
各症例とも当施設の超重症児(者)管理室に入所中の利用者で、胃瘻による栄養管理を行っている。瘻孔からの「栄養剤漏れ」改善を目的として半固形化栄養剤を導入し、1日あたりの熱量、水分量、投与回数などには大きな変更を加えなかった。[症例1] 57歳女性。脳性麻痺・精神遅滞。大島分類1、超重症児スコア 36点。成人以降の最低体重は23.8kg(ただし保存されている記録の範囲にて)。変更前の体重33.6kg、血清アルブミン値(以下、Alb)3.6g/dl。変更1年後の体重28.7kg(-14.6%)、Alb 4.1g/dl。 [症例2]25歳男性。溺水後遺症。大島分類1、超重症児スコア34点。成人以降の最低体重は28.3kg。変更前の体重38.8kg、Alb 4.0g/dl。変更1年後の体重35.8kg(-7.7%)、Alb 4.3g/dl。[症例3] 25歳男性。脳性麻痺・精神遅滞。大島分類1、超重症児スコア34点。成人以降の最低体重は27.3kg。変更前の体重33.0kg、Alb 4.1g/dl。現在、変更8カ月後にて体重29.5kg(-10.6%)、Alb 4.2g/dl。
考察
提示した各体重減少はAlb低下を伴っておらず、低栄養状態によるものとは評価しにくい。年単位の経過で捉えると、いずれも全身状態は安定しており今回の半固形栄養剤導入時点での体重は増加傾向にあった。以上の点をふまえると、そもそも過剰であった3症例の体重が、半固形化栄養剤注入食の導入により是正された可能性がある。