抄録
気管軟化症と診断された4例の重症心身障害児(以下、重症児)の臨床像を検討した。全例で呼気性の喘鳴や原因不明の呼吸困難症状を契機に気管支鏡検査で診断された。原疾患は精神運動発達遅滞2例、進行性ミオクローヌスてんかん1例、溺水後遺症1例であった。4例中3例で胸郭の変形、下気道感染の反復、てんかん、気管内肉芽といった既報の気管軟化症に関係するとされている状態を有しており、2例では気管に対する外側からの圧迫が判明した。また、3例で生後6カ月以内に喘鳴を認めており、何らかの先天的要因にさまざまな誘因が加わったことで気管軟化症を発症している可能性が示唆された。治療として、鎮静や体位の工夫の他に気管カニューレの工夫、陽圧換気、外科手術が施行された。また、在宅での緊急時の対応として、自己膨張式バッグに呼気終末陽圧弁(PEEP弁)を装着し、換気することが有用と思われた。気管軟化症は早期の診断と適切な治療が予後を改善させるため、症例を蓄積し臨床像を明らかにさせていく必要がある。