日本重症心身障害学会誌
Online ISSN : 2433-7307
Print ISSN : 1343-1439
原著
当院で経験した急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を発症した3症例
江添 隆範西條 晴美曽根 翠浜口 弘
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2011 年 36 巻 3 号 p. 433-440

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抄録
急性呼吸窮迫症候群(acute respiratory distress syndrome : 以下、ARDS)を発症した3例の発症経過、治療、合併症について報告した。1例は尿路感染症から敗血症、多臓器不全となりARDSを発症した。他の2例は呼吸器感染症に引き続き発症した。抗菌薬、人工呼吸器管理、ドパミン等の血管収縮薬を用い循環管理を実施した。重症の循環不全や多臓器不全を呈した2例にステロイドパルス療法を1クール実施したが、無効であった。この2例は腎不全を発症したために、さらに腹膜透析を行った。そのうち1例は腎不全の改善のみならず呼吸、循環が安定し、多臓器不全からも回復し、腹膜透析はきわめて有効であった。腹膜透析により、ARDSや敗血症の原因であるサイトカインが除去されたためと考えられた。1例において、ARDSの発症後に弛緩性四肢麻痺を発症し、神経伝導速度の結果よりcritical illness neuropathyと考えられた。呼吸器や尿路感染症のリスクが高い重症心身障害児(者)(以下、重症児(者))において、重症の呼吸困難を発症した場合はARDSの発症を念頭におくべきである。すみやかに診断、治療開始することが、予後の改善には重要である。
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© 2011 日本重症心身障害学会
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