抄録
はじめに
A型ボツリヌス毒素(以下、BTXA)治療は標的筋への直接投与による限局的効果とその手技の簡易さ、副作用の少なさから広く普及し始めている。BTXA治療とリハビリテーション(以下、リハビリ)を併用し、両側支柱付き短下肢装具(以下、装具)装着した状態での歩行が可能となった症例を報告する。
症例
13歳10カ月 男児。
病名
脳性麻痺、精神遅滞。
現病歴
32週切迫早産で出生、双胎間輸血症候群(受血側)でNICU入院。1歳4カ月で胃瘻造設、8歳9カ月で喉頭気管分離術を受け、11歳7カ月時に当園に入園した。
経過
BTXA治療は2回施行し、治療による全身的・局所的な副作用や有害事象は認めなかった。リハビリはBTXA治療前には週1回40分施行していたが、BTXA治療後は支援学校と提携し、週5回各60分施行する集中リハビリへ変更した。装具療法ではBTXA治療後装具装着を1日8時間とした。結果装具装着し椅子座位からの立ち上がりが可能となり、その後近位監視ながらも立位保持さらに100mの連続歩行が可能となった。(映像供覧)
考察
BTXA治療は脳卒中治療ガイドライン2009において推奨グレードAとされており、英国内科医師ガイドラインでは、BTXA治療はリハビリプログラムの一部であるとされ、BTXA治療と併せたリハビリの重要性を指摘している。本症例はBTXA治療直後から内反尖足の改善が見られ、これは主にBTXA治療の効果と考えられた。1カ月、3カ月の評価においても筋緊張、関節可動域はBTXA施行直後の状態が維持されており、これは後療法としての集中リハビリの継続と装具療法の有用性を示唆している。日常生活動作、歩行能力に関しても本症例は身体的にも成長期であり、筋緊張と関節可動域が改善している状況下での集中リハビリにより運動学習が促され動作能力向上につながったものと考えられた。