抄録
はじめに
睡眠時無呼吸症候群(閉塞性優位)があるA氏は日中にSpO2が80〜84%まで低下することが時折みられるものの、吸引や下顎拳上により90%以上に回復する。入眠時はそうした対応ではすみやかにSpO2が回復しないことが多く、体位変換、肩まくら使用、手やタオルを用いて下顎保持し続けるなど、数分かけて回復するのが現状である。このような場面では、下顎が開口し、舌根沈下が生じSpO2の回復が難しいと考えた。そこで、姿勢管理と補助具を用いた下顎保持を行うことで換気低下を軽減させるために事例検討を行った。
対象
A氏 70歳代 女性 身長130cm台、体重30kg台。診断名:精神運動発達遅滞、てんかん、気管支喘息、睡眠時無呼吸症候群
目的
姿勢保持と補助具による下顎保持で、換気低下を軽減させる。
方法
第1期(17日間)は現状把握。第2期(13日間)は左側臥位の姿勢保持と右側臥位時に補助具を使用した。SpO2が90%以下のときは痰貯留音を確認し吸引を実施した。右側臥位時は補助具を顎と肩の間に挟み込むようにして使用し、左側臥位時では、頭部と体幹の位置を整えた。仰臥位・車椅子乗車時は吸引後に側臥位に体位変換をした。補助具は直径7cm、高さ19cmの円柱状で、詰め物にタオル、カバーには綿生地を使用した。
結果
第2期では、左側臥位でのSpO2低下が、第1期より17%減少し、舌根沈下によるSpO2の低下は1%減少した。補助具の使用回数は12回であり7回は60秒未満で90%以上に回復した。
考察
姿勢管理を適切に行うことで、気道確保につながり、SpO290%以下の頻度が減少した。補助具の有効性は使用回数が少なかったため、統計的に有効性を証明できないが、SpO2の回復に要する時間を短縮できたことから、気道確保につながると考えられる。
結論
適切な姿勢保持することで、舌根沈下を防ぎ、換気低下を軽減できた。また、補助具の使用で換気低下の軽減に役立つことが示唆された。