抄録
背景
当院は京都府南部に位置し、セーフティーネット医療である重症心身障害医療を中心に行っている。国立病院機構は重症心身障害医療における「在宅重症児(者)支援」を目標の一つとして掲げており、当院も短期入所を始め、外来での健康管理や相談支援等、積極的に関与してきた。その活動の中で、地域で生活を送る重症心身障害児(者)とご家族は、健康管理や急変時の対応等の医療面への不安の他、支援学校卒業後の過ごしの場や日中活動と社会参加、将来に向けた生活への不安等、様々な想いを抱えておられる方が多く、個別の対応だけではなく地域の実情にあった多種多様な社会資源の活用など支援体制の構築が課題に挙がってきた。
また重症心身障害児(者)の地域生活にとって不可欠な日中活動の場を提供している事業所等に於いては、医療との接点があまりなく医療ニーズの高いケースの対応は手探りの状況であり、現場での課題を医療・福祉・教育・行政が集い、議論や情報共有をする場はほとんどないのが実態であった。
概要
当院では、このような課題を解決していくため、2014年度に「重症心身障害児者の地域生活モデル事業」にて取り組みを行った。内容としては、以下3点となっている。
1.山城圏域(京都府南部)に「地域生活モデル事業ネットワーク会議」の立ち上げ
2.在宅重症心身障害児(者)に対応する地域の事業所等で働く看護師を対象とした「重症心身障害 研修・実習会」の実施
3.京都府下(京都市を含む)の保健福祉行政・特別支援教育部門、重症心身障害児者施設、当事者家族、地域の福祉事業所、NICUを有する急性期病院などが参加する「京都府重症心身障害児者の地域生活支援協議会」の設置に向けての働きかけ
本発表では、地域の関係機関と協働しモデル事業に取り組んだことで、2015年度へつながる支援体制の構築となったので、その経過や取り組み内容を報告するとともに、考察を加える。