日本重症心身障害学会誌
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巻頭言
第44回日本重症心身障害学会学術集会に向けて
岩崎 裕治
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2018 年 43 巻 1 号 p. 1-2

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抄録

第44回日本重症心身障害学会学術集会を、2年後にオリンピックを控える東京で開催させていただくことになりました。今回のテーマは「高度医療と療育-いのちとくらしの現在から未来へ」とさせていただきました。近年障害が重度化し、施設や在宅で多くの医療的な支援を必要とする重症心身障害児(者)が増えております。その変化にあわせて医療関係者のみならず、重症心身障害児(者)を取り巻く家族や福祉・教育など、それぞれの場において、医療的な対応が必要とされてきています。特に、人工呼吸管理など院内だけでなく在宅で日常的に使用されるようになり、いろいろな場面で高度な医療が常に必要となっています。また医療の進歩に伴い、新しい治療方法が現場に入ってきて、またケアの方法も変わってきています。このような医療の進歩に対応し、いのちを守っていくことがまずは求められますが、それだけでなく暮らしを保障していくために、どのような療育が必要とされているのでしょうか。重度化に対応する専門職種の養成、多職種連携、重度化の予防、地域との連携、意思決定支援、トランジションの問題、高齢化への対応など、課題はたくさんあります。皆様と一緒にこの学会をとおして、このような課題を共有し、現状や対応などを論じることができれば幸いです。 今回の特別講演では、動物とヒトとの比較認知科学の権威でいらっしゃいます慶応大学名誉教授の渡辺茂先生に「不公平を嫌うのは人間だけか -動物にもある共感と嫉妬-」というテーマでお話をいただきます。講演の内容としては、「人間は公平を求めますが、この起源は古く、狩猟採集民族も公平を強く求めます。ヒト以外の動物も不公平を嫌うのでしょうか?この講演では公平性の進化を考えてみます」というご紹介をいただいております。重症心身障害では、意思表示を明確にできることが少なく、どのようにしてその方の意思や、希望をとらえていくのかが一つの大きな課題です。今回のお話から重症心身障害を考えていくヒントをいただけるのではと期待しております。シンポジウム1では座長にこの分野の第一人者である石川悠加先生をお迎えし、全国の療育センターや、在宅で増加している人工呼吸管理を必要とする重症心身障害児(者)の現状や問題点、対策などにつき、先進的に取り組んでいる各現場の方からお話を伺い討論できればと思います。シンポジウム2では、看護職の専門性にスポットをあてて、専門看護師の現状と現場での取り組みなどについて討論していただきます。 この学会では、重症心身障害に関わる多職種が、職種の垣根を越えて、自由に討論できるのが、大きな特色といえます。また医療・療育関係者だけでなく、行政や、地域での福祉に関係する方々のご参加もあります。重症心身障害児(者)を支えるすべての方々とともに、医療と療育の現在とこれからについて意見交換をしたいと考えております。 一般演題・ポスター発表など、多数ご応募いただけましたら幸いに存じます。日々様々な表情をみせる東京も学会の後などにお楽しみください。また、皆様にお目にかかれますことを楽しみにしております。

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