日本重症心身障害学会誌
Online ISSN : 2433-7307
Print ISSN : 1343-1439
シンポジウム2:いのち輝く生活を多職種と協働で支える看護の専門性を考える
重症心身障害福祉協会での取り組み
落合 三枝子
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2018 年 43 巻 2 号 p. 228

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抄録
1.教育機関設立までの経緯 2006年の診療報酬改定による7対1入院基本料の影響で、東京都内の重症心身障害児(以下、重症児)施設(現医療型障害児入所施設、療養介護事業所)では、さらに看護師確保が困難になり在宅重症児者の短期入所用ベッドを一部制限せざるをえなかった。そこで2008年、東京都内の重症児施設の看護管理者たちは、重症児施設が抱える人材確保と人材育成に関する実態、課題と解決の方向性を明らかにするために、社会福祉法人重症児福祉協会(現・公益社団法人日本心身障害福祉協会)に加盟する全国118施設の看護師と看護管理者を対象に実態調査を行った。その結果、新卒採用者の離職率が高いこと、重症児者施設以外への転職が主な退職理由であることがわかった。 全国の看護管理者からは、研修の充実を求める意見が多数寄せられた。これまで培ってきた重症心身障害看護の経験知・暗黙知を形式知として体系化していくことの必要性と、その経過の中で重症心身障害看護の専門性が構築されていくことが期待された。そこで2009年4月、日本重症児福祉協会に看護専門研修委員会(現専門看護師研修部会:各地区の重症児施設から選出された委員で構成された組織)が設置され、認定教育機関の創設や教育機関での受講修了者に対する認定審査制度についての検討が始まった。 2.教育機関と認定審査制度について 2011年10月に認定教育機関第1号として東京都が認定され、次いで近畿、中国・四国、九州、神奈川、埼玉、関東・中部・千葉(埼玉以下は2016年に合併し関東・中部と名称変更)現在全国に7か所の教育機関がある。地域差はあるが、施設の看護管理者や福祉協会認定重症心身障害看護師等が中心に運営を行っている。 教育の目的は「重症心身障害施設に勤務する看護職員に対し、重症心身障害の看護分野における専門的な知識・技術を理論的に探究し、質の高い看護実践活動と指導的役割を果たす人材育成をするための研修を実施する」としている。 重症児者は病態や障がい像が非常に個別的であり、専門的な知識・技術が必要である。重症心身障害看護を経験している中堅看護師が、この研修を受講し知識・技術をさらに深め、より質の高い看護を提供出来、自信を持って後輩の育成に当たれることを期待した。医療の視点で重症児者の生命を支え、他職種と協働・連携し、成長発達を促し、QOLを高め、家族を支えていくことのできる看護師を育成するのは教育機関の役割であり、その教育機関を支えるのは専門看護師研修部会の役割である。全国の重症児施設で働く看護師がやりがいを持ち、定着につながり、魅力ある職場づくりにつながることを目指している。事実、教育機関で他施設実習を経験し自施設の振り返りや良いところを取り入れ、他施設職員との情報の共有や交換ができ、それぞれのモチベーションの向上や自己研鑽につながっている。 3.専門看護師研修部会の役割 2013年4月、日本重症児福祉協会の公益法人化に合わせ、規則細則の変更を行い、旧重症心身障害児施設以外にも門戸を開き、現在は訪問、通所、国立より受講生が増えている。専門看護師研修部会の委員は現在、各教育機関から選出されている。委員の役割は認定審査、認定更新審査、教育機関の認定・更新担当、HP担当、シラバス担当に分け、全国施設協議会、重症心身障害学会、看護管理研究会の中で会議を行い、運営を行っている。 今後の専門看護師研修部会の課題としては、福祉協会認定の重症心身障害看護師が各施設でどのように活躍しているかの現状把握と情報共有、後輩育成と活躍の場を広め保障していくことが必要であろう。また、教育機関の研修受講者に効果的な教育機会を保障するために各施設の看護管理者のサポート状況を把握したい。さらに、社会の変化に対応した重症心身障害看護の進化を視野に入れたシラバスの評価、変更も課題である。 略歴 1988年3月 看護専門学校卒業 1988年4月 国立立川病院就職 1995年7月 国立病院東京災害医療センター転任(国立立川病院・国立王子病院 統廃合の為) 1998年3月 国立病院東京災害医療センター退職 1999年4月 社会福祉法人 重症心身障害児協会 島田療育センター就職 2011年4月 現職に至る
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© 2018 日本重症心身障害学会
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