抄録
目的
当センター肢体不自由児親子通園に3歳から通う女児は入園当初、自閉傾向が強く経口摂取が困難な状態であった。親子通園をしていた母親は保育に消極的であった。生活面や食事面から継続した支援をすることで児の様子が変化し、保護者は通園の意義を感じるようになったため報告する。
症例
対象児:5歳(H30.4現在)女児
診断名:コルネリア ・デ ・ランゲ症候群・胃食道逆流・自閉スペクトラム症
医療ケア:胃瘻、噴門形成術後
通園形態:3歳児週3日、4歳児週5日の親子通園
経過
入園当初:感覚過敏が強く座位保持椅子に座れず食事は経管栄養剤の注入のみ。スプーンや食べ物を近づけると泣いて嫌がる。抱っこを嫌がり機嫌悪く泣くことが多い。
3歳児:抱き姿勢で好きな玩具を見せながら食事指導開始。ペースト食を指で口腔内に入れると激しく泣く。胃瘻からペースト食を注入開始。後半は麦茶を数口スプーンからすするようになる。
4歳児:スプーンを近づけると開口が見られ、夏前にはペースト食の経口摂取量が増えた。その頃職員が食べているパンをじっと見るようになり、小さくちぎったパンを食べるようになる。年長になる頃には胃瘻からの注入は水分のみになり、みじん食を経口から食べるようになった。スライムや片栗粉などの感触遊びの受入れも良くなり自分から触る。
考察
重度の知的障害があり、自閉傾向が強い本児が人への関心を持ち、食事を経口摂取できるようになるのは難しいと考えていた。しだいに本児に変化が表れ、笑顔が増えると保護者の通園への意欲も高まり子育てへの気持ちの変化も見られた。親子通園は日々の生活を共にすることで子どもの小さな変化も保護者と共有することができる。子育ての喜びを見出すことで保護者の支えることにつながるということを実感した。