抄録
はじめに
医療的ケア児を始めとする医療ニーズのある子どもの多くが在宅生活を送る中、関係機関の看護職者は多様な課題に直面していると推察される。本研究では、看護職者が捉える医療ニーズのある子どもと家族への支援の現状と課題・要望を把握するため調査を行った。
方法
A県内の子どもと関わる職務に就く看護職者1,398人を対象に質問紙調査を行った。
調査内容は対象の基本情報(職種、所属機関)、医療ニーズのある子どもと家族との関わりで捉えた現状と課題・要望を自由記載で回答を求めた。
対象の基本情報は単純集計した。自由記載は現状・課題・要望別に内容の類似・相違性に着目してコード化し、さらに抽象度を上げてサブカテゴリー、カテゴリー化した。なお、調査実施に際し、所属機関の倫理審査委員会の承認を得た。
結果・考察
回収数は478(34.2%)であり、自由記載の回答があった71人(有効回答率14.9%)を分析対象とした。対象の職種は看護師41人(57.7%)、保健師7人(9.9%)、養護教諭23人(32.4%)であり、所属機関は総合病院、訪問看護ステーション、保育園、小・中・高等学校、特別支援学校、通所施設、保健センターであった。
現状や課題として、社会制度や所属機関の立場の違いがもたらす障壁に加え、多職種、特に医療機関・従事者との連携の難しさを認識していた。さらに、支援体制の不十分さや看護職者の知識・経験不足を感じながら、家族が担う役割の重要さとそれに伴う家族の負担を認識していた。このような中、要望としては、施設の充実化やケア提供者の育成、多機関・多職種での円滑な連携実現のための場の確保とケアに関する直接的アドバイス等があった。医療ニーズのある子どもと家族への支援の向上には、行政、医療、教育、福祉をつなぐ看護職者の役割は大きいと考えられ、彼らに対する小児看護の専門知識・技術の提供と連携システムの構築が重要であると考える。