抄録
はじめに
重症心身障害児者病棟の患者は、運動障害による活動不足、抗けいれん薬等の服用による腸蠕動運動の低下、体幹の変形や拘縮のため、適切な腹圧がかけられない等により便秘が慢性化しやすい。当病棟でも便秘の患者が多く、患者毎に医師の指示で排便なし○日目でグリセリン浣腸(以下、浣腸)、または緩下剤の服用を行っている。浣腸実施時、患者は大声を上げ暴れるなど苦通を表すことが多く、腸管穿孔や腹膜炎を誘発するなどのリスクが有り、頻回な常用を無くしたいと考え先行研究をふまえて、腹部マッサージに着目した。当病棟でも看護計画に腹部マッサージの立案はあるが、日々のケアとして毎日実施されていなかった。そこで、重症心身障害児者病棟の便秘傾向の患者へ腹部マッサージを行うことで腹部マッサージの有効性を検討した。
目的
排便困難に対する援助方法が明らかになることで、浣腸の常用を減らし、浣腸に伴う負担やリスクを減らす。
方法
排便なし○日目で浣腸指示があり、浣腸を施行しないとほぼ排便がない当病棟入所中の患者で腹部マッサージ実施に承諾が得られた4名。腹部マッサージの手技統一を図るため、当病棟の看護師、准看護師に手技統一のため勉強会を実施後、1日2回(14時半頃と20時頃)1回3分施行。
結果・考察
今回の研究で、自然排便回数の増加は図れなかったが、1回の浣腸で有効な便量が排出でき、追加指示の浣腸、緩下剤の使用が減少した。また、腹部マッサージ中に排ガスがみられるようになった。腹部マッサージを継続することで、ブリストル便形状スケール1から4への変化が起こった。そのことは、腸蠕動運動が促され、腸内での便の停滞時間が短縮したことにより、便の性状に変化が起きたと考えられる。以上のことより、腹部マッサージは重症心身障害者における排便コントロールに有効であり、患者に対する侵襲的なケアの減少につながると言える。