2020 年 45 巻 3 号 p. 333-340
重症心身障害児(者)(以下、重症児(者))の看護において、安楽は重要な看護実践の一つである。本研究では、医療型障害児入所施設でくらしている重症児(者)を安楽な状態に導くための看護実践と課題を明らかにすることを目的として、グループインタビューを行い、データを質的に分析した。その結果、【安楽を確かめるためにさまざまな手段を駆使する】、【安楽な状態に導くための方法を多角的に模索する】、【「その人」の安楽な状態を知るために関係性をつくる】、【“ドンピシャリな安楽”が提供できたときに喜びを感じ、その方法を伝えたい】、【看護師間で対話が上手くできないことに葛藤する】、【安楽のケアを実践していくために職員が良い雰囲気で対話できる環境を模索する】の6つのカテゴリーが抽出された。看護師は、重症児(者)を安楽な状態に導くために、「その人」が安楽な状態であるのかを確かめたり、ケア方法を試行錯誤するプロセスを経ていた。また、看護師自身の心理状態や安楽を提供する環境を整えること、さらに重症児(者)との関係性を構築するというプロセスを経ることが重要であると考えて看護実践を行っていた。そして、重症児(者)を安楽な状態に導く看護実践を行うためには、そのプロセスにおける看護師の意図を言語化して、他の看護師や職員に伝えることが必要であると考えていた。そのためには、職員間で安楽について対話を重ねていく機会を作ることが課題として挙げられた。