日本重症心身障害学会誌
Online ISSN : 2433-7307
Print ISSN : 1343-1439
一般演題
O-7a-04 非閉塞性腸管虚血(NOMI)を発症した重症心身障害者の2例
山下 久美子木内 正子小田 望永江 彰子藤田 泰之口分田 政夫
著者情報
ジャーナル フリー

2021 年 46 巻 2 号 p. 253

詳細
抄録
症例1は61歳男性、脳性麻痺、てんかんで寝たきりの入所者。複数回の麻痺性イレウスの既往あり。経鼻空腸チューブによる経管栄養。前日夜に嘔気、腹部膨満があり注入を中止したが、朝より腹部膨満が増強し、胃より血性排液がみられた。血液ガスで異常を認めず点滴治療を行っていたが、午後より発熱を伴い、頻呼吸、顔面蒼白となったため大学病院へ転院。転院後ショックとなり、代謝性アシドーシスを認めたため腸管壊死を疑われ緊急手術となった。手術にて胃の部分壊死と回盲部より口側20-80cmの小腸に分節状の壊死がみられNOMIと診断、胃部分切除・小腸切除術を行われた。手術後9日目に縫合不全のため再手術となり回腸人工肛門が造設された。その後状態は改善し、初回手術後79日目に当施設へ転院となった。 症例2は57歳男性、脳性麻痺、てんかんで寝たきりの入所者。内視鏡的胃瘻造設術後に胃穿孔、限局性腹膜炎となり開腹手術が行われた既往あり。腸瘻による経管栄養。フォーカス不明の敗血症性ショックに対する治療終了後6日目に再度発熱を認めた。抗生剤治療を開始したが、翌日深夜帯より頻脈、頻呼吸、腹部膨満が出現。腹膜刺激症状は認めず、経鼻胃管と腸瘻の開放にて一時的に症状は軽減したが、朝より腹部膨満が増強しショックとなったため大学病院へ転院。造影CT検査にて小腸壁の造影不良、腸管気腫、門脈気腫像を認め、NOMIの診断にて広範囲小腸切除術を行われた。快方に向かっていたが、手術後47日目に急死した。 NOMIは早期に特異的な症候はないが、急速に進行し重症化することも多く、予後不良の疾患である。重症心身障害児(者)では腹部膨満や麻痺性イレウスはよくみられる症状であり、自覚症状の訴えも乏しいため早期発見・診断が難しいと思われる。何らかの腹部症状が見られた際はNOMIの可能性も念頭に置く必要があると考えられる。
著者関連情報
© 2021 日本重症心身障害学会
前の記事 次の記事
feedback
Top