抄録
目的
重症心身障害、脳性麻痺、てんかんなどがあると、コロナワクチンによる副反応が出やすいのではと心配する人たちがいる。しかしながら、これら疾患と副反応の関係については、文献的にも明らかにされていない。我々の施設での経験を報告することにより、これら心配、疑問に少しでも答えようとした。
方法
対象は、家族、後見人から新型コロナワクチン接種の了解が得られた長期入所の114人。女性58人、男性56人で、年齢は43.9±14.1歳であった。ファイザー社製ワクチン0.3ml筋注の翌日か翌々日に体温37.5度以上および38.0度以上の発熱出現頻度を調べた。年齢、性別、体重、大島分類による身体障害や知的障害の程度、病名が脳性麻痺かそれ以外か、抗けいれん剤服用の有無、胃瘻の有無、薬アレルギー、食物アレルギーの有無、血液検査所見などの項目が、発熱に関係しているかSTATAを用いてロジスティック解析した。p<0.05で統計的有意差とした。
成績
ワクチン1回目後に37.5度以上発熱は19人(17%)、2回目後に37.5度以上発熱は64人(56%)だった。1回目に37.5度以上発熱した19人中15人は、2回目にも37.5度以上発熱した。ワクチン1回目後に38.0度以上発熱は6人(5%)、2回目後に38.0度以上発熱は41人(36%)だった。摂取部位の腫脹、発赤を認めた人がいたが、重篤な副反応は認めなかった。方法で述べた項目は、1回目、2回目とも発熱をきたすかどうかに有意な影響を及ぼさなかった。
結論
重症心身障害者において身体障害や知的障害の程度、抗けいれん剤服用などは、コロナワクチン副反応に有意な影響を与えなかった。障害の程度が強くても、コロナワクチン接種に問題はみられなかった。