抄録
はじめに
利用者の高齢化・重症化が進み、重症心身障害児(者)施設での看取りのケアが増加している。A施設でも近年多くの看取りのケアを実践している。ガン末期ではない看取りを迎えた症例を経験し、延命治療について職員間で様々な葛藤や課題があったため、経過を考察し報告する。
症例
51歳女性、大島分類A1、遺伝性歯状核赤核淡蒼状ルイ体萎縮症、重症肺炎。敗血症ショックとなり、症状のコントロールが出来ず看取りに入る事を確認したが、常に昇圧剤や薬剤の治療が行われた。看取りの宣言から約1か月後に永眠。
経過と考察
一旦看取りに入り、その後病態が安定したため積極的な治療を開始するが、その都度治療方針が変更になり、A施設の看取りの手引きに基づきカンファレンスを4回実施した。しかし、どこまで治療が可能なのか、痛みを伴う治療を本人が望んでいたのか本人の意思確認が困難であり、家族が不在で第三者が後見人であったため、判断が難しくカンファレンスの度に意見を求められたが職員間で困惑があった。苦痛を伴う治療は精神的にも負担が大きく積極的な治療を行う方針になったが葛藤があった。また、生活面は本人が長年親しんできた音楽や書物の朗読をし、今まで関わりの深かった職員と関わる機会を設けたが、本人の生い立ちや生活環境を充分に確認し合えていなかった。治療も生活も病棟全体で同じ方向性で最善の関わりができるよう情報共有していく必要があったと考える。また施設で生活してきた利用者は、長年の記録や関わりの深い職員からの情報、家族の思い出や手記から情報を得る事が可能である。そういったものから、過ごしや日常のケアに繋げることができたのではないかと考える。生活の場である施設では、看護師や多職種が家族の代弁者となり、意見を伝えていく必要がある。申告すべきIOCはない。