抄録
本研究は、重症心身障害児(者)(以下、重症児(者))に関わる看護師が抱いている倫理的葛藤を明らかにするとともに、看護倫理に関する認識についての実態を調査することを目的に、Aセンター重症児(者)病棟に勤務する看護師92名を対象に、質問紙調査を実施した。その結果、回答者の65%が、看護倫理に関する知識が「ある」とは思っておらず、看護倫理に関する認識において、倫理の4原則が十分理解されていないことがわかった。また、倫理的葛藤に関しては、「平等」および「職員による違い」の項目で葛藤の頻度が高く、その要因として平等の捉え方や個々の倫理観の違いが考えられた。以上より、看護倫理への理解を深め、倫理的葛藤の頻度を減らすには、倫理観の統一が重要であり、そのためには、組織的に継続した基礎的な看護倫理教育の必要性、タイムリーな倫理カンファレンスの習慣化の必要性などが示唆された。