日本重症心身障害学会誌
Online ISSN : 2433-7307
Print ISSN : 1343-1439
看護研究応援セミナー
看護職のための臨床研究セミナー「看護研究での倫理的配慮のポイント」
宮坂 道夫
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2022 年 47 巻 2 号 p. 252

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抄録
企画 日本重症心身障害学会誌編集委員会 看護研究応援セミナー委員 新潟大学大学院 保健学研究科 田中 美央 順天堂大学 医療看護学部/医療看護学研究科 倉田 慶子 千葉科学大学 看護学部/大学院看護学研究科 市原 真穂 北海道大学大学院 保健科学研究院創成看護学分野 松澤 明美 筑波大学 医学医療系 発達支援看護学 涌水 理恵 企画係から 本学会での「看護職のための臨床研究セミナー」は、毎年看護職の臨床での研究を応援するための企画を継続してきました。重症心身障害児(者)は言葉での表現が難しく、研究参加への同意の確認がしにくいため、同意手続きの難しさがあります。また、長期入所者で面会者との直接的なかかわりが少ない中での、本人の意思による研究途中の撤回をどのように確認するのかなど、様々な課題があります。特に倫理審査の手続きでは、このような状況をどのように記載すればよいのか疑問を持たれている看護職も多いかと思います。 今回は、研究倫理の重要な要素や手続きを理解するために、新潟大学大学院保健学研究科の宮坂道夫先生から、ポイントをお話しいただきます。また、臨床の看護職の皆さんの疑問に直接ご回答いただく機会も設けます。研究の社会的な価値の重要性も増しており、日々の実践をより良いものにするため、看護職の皆さんの研究の疑問が解決できるように企画しています。 講演「看護研究での倫理的配慮のポイント」宮坂道夫先生 研究において必要とされる倫理的配慮は、様々な法律やガイドラインによって定められている。それらのうち、看護研究の倫理的配慮を考える際に参照すべき最も重要な指針は、文部科学省、厚生労働省、経済産業省による「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」および「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針ガイダンス」である。この他に、文部科学省による「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」についても十分理解しておく必要がある。 これらの指針は、医学・生命科学領域の広い範囲の研究をカバーしているが、看護研究では、インタビューやアンケートなどを用いる調査研究や、侵襲性の比較的低い介入研究が多くを占めており、研究の対象と方法によって、倫理的配慮の要点をある程度類型化(共通して配慮しなければいけない内容を整理)して考えることができる。本講演では、これらの指針を参照しながら、(1)侵襲・負担・リスクについて、(2)インフォームド・コンセント、適切な同意、代諾、インフォームド・アセントについて、(3)個人情報の保護と研究情報の保管・開示について、(4)その他(社会的弱者への配慮、利益相反、研究不正の防止など)の各点について、倫理的配慮の要点を解説する。 演者ご略歴 早稲田大学教育学部理学科生物学専修卒業、大阪大学大学院医学研究科修士課程修了、東京大学大学院医学系研究科博士課程単位取得、博士(医学、東大)。東京大学医学部助手、新潟大学医学部准教授等を経て、現在新潟大学大学院保健学研究科教授。日本生命倫理学会、日本医学哲学・倫理学会で元理事、日本看護倫理学会で現理事。主著に『医療倫理学の方法:原則、手順、ナラティヴ』、『対話と承認のケア:ナラティヴが生み出す世界』(ともに医学書院)など。訳書に『人間科学のためのナラティヴ研究法』(クォリティケア)等。
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