抄録
はじめに
異食行動があるC氏は幼少期より帆布製の拘束衣を着用し、個室の高柵ベッド内で10年以上生活している。今回、デイルームでC氏の行動を計画的に観察することで、異食行動なく身体拘束解除の拡大を行うことができたので報告する。
研究方法
研究対象:C氏40歳代、女性、脳性麻痺 (大島分類5 IQ20)、異食行動あり。調査期間:20XX年9月〜20XX年11月。分析方法:1)C氏が1時間/週2回、デイルームで過ごす環境を4つの段階に設定する。看護師または療養介助員の付き添いのもと、1つの段階を2週間ずつ過ごしてもらう。2)行動観察シートに沿って観察し、ABC分析を行う。
倫理的配慮
A病院倫理審査委員会の承認後、家族の同意を得た。
結果・考察
C氏の行動観察を行った結果、【何も持たずに過ごす段階】では、興奮はなかったが毛髪を口に入れていた。【玩具を持って過ごす段階】では、ボール・鈴・布絵本等には関心を示さなかった。そこで療養介助専門員が、以前読み聞かせに使用していた紙絵本に興味を示すのではないかと思い渡すと、笑顔・興奮の声があり活動的となった。デイルームで過ごす患者の笑顔が増えたことがスタッフの喜び・達成感となり、創意工夫・試行錯誤に繋がったと考える。【他患者と過ごす段階】では、他患者には興味を示さず混乱もなかったが、マットの糸を引っ張る等の行為があった。そこで紙絵本を持たせると異食行動なく過ごせた。【一人で過ごす段階】では、スタッフが少し離れて見守り観察を行った。紙絵本のページを捲る等し、1.5時間に延長しても異食行動なく過ごせた。患者の興味を示すものを提供したことで安全に過ごすことができ、身体拘束解除の拡大に繋がったと考える。
結論
1.患者の行動を観察し興味のあるものを提供したことで身体拘束解除の拡大ができた。
2.身体拘束解除を拡大するためには、患者に関心を持ち、常に創意工夫・試行錯誤しながら環境調整していく。