抄録
はじめに
重症心身障害児(者)(以下、重症児(者))では難治性てんかんのため抗てんかん薬の多剤併用による副作用をよく経験する。難治性てんかんに対してケトン食を導入することで、発作の改善や抗てんかん薬の種類の軽減、減量中止できる可能性が報告されている。当院でケトン食療法を導入した症例を報告する。
症例
症例は41歳の女性。てんかん、重度知的障害で、胃瘻からの経管栄養を行っている。生後4か月時に点頭てんかんの診断でACTH療法を受けたが、その後もてんかんは難治で経過し、抗てんかん薬4剤(クロバザム、フェニトイン、トピラマート、ラコサミド)を使用したがコントロール不良であった。難治性てんかんに対してMCTオイルと既製の経腸栄養剤とを併用したMCTケトン食療法を開始した。導入後は安定したケトーシスが得られたが、合併症として低カリウム血症を伴う下痢を認めた。治療開始後3か月が経過し、発作頻度に明らかな変化はないが、脳波所見の一部に改善を認めている。
考察
難治性てんかんに対するケトン食の経管栄養剤として、日本国内では明治乳業が「ケトンフォーミュラ」を製造しているが市販はされておらず、また栄養組成としても乳幼児を基準に設計されているため、それのみで成人の栄養基準を満たすことは困難である。このため、MCTオイルと既製の経腸栄養剤とを併用したメニューを治療に用いた。導入後は安定したケトーシスが得られ、かつ有効であると判断したが、下痢と低カリウム血症の管理に難渋した。難治性てんかんを有する重症児(者)に対するケトン食療法の治療効果や合併症について、治療によるメリットと起こり得る合併症を熟慮しつつ、さらに症例を重ねて検討していく必要がある。