日本医真菌学会総会プログラム・抄録集
Print ISSN : 0916-4804
第49回 日本医真菌学会総会
セッションID: P-120
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イヌのリンパ節より分離された Lecythophora hoffmannii について
*佐野 文子榮山 信一村田 佳輝亀井 克彦畑井 喜司雄西村 和子
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キーワード: イヌ, Lecythophora hoffmannii
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抄録
Lecythophora hoffmannii は環境中に腐生菌として存在する新興真菌症原因菌で,我が国でも 1987 年に Iwatsu らが豆腐より分離している他,環境中から多数分離されている.本菌種による感染は心内膜炎,蜂窩織炎,角膜感染,エイズ患者での慢性副鼻腔炎およびウシの流産などが知られている.今回,イヌの真菌性骨髄炎の経過中,付属リンパ節より本菌種を分離した.症例は 2 歳の雑種避妊雌で,既往歴として細菌性外耳炎,膿皮症が記録されていた.右前肢の跛行を主訴として来院した時には,上腕骨に贅性化骨を認め,病理組織検査により真菌要素が確認された.抗真菌薬(ケトコナゾールおよびイトラコナゾール)による内服を 5 ヶ月間行ったが,骨病変の悪化により,肩甲骨からの断脚を実施した.断脚から約 5 ヶ月後に腫大した右浅頚リンパ節に PAS 陽性の糸状菌を確認し,培養検査と LSU rRNA 遺伝子 D1/D2 領域の解析から L. hoffmannii と同定した.2 ヵ月後には全身へ播種し、最終的に強直性痙攣を起こし,第 459 病日に安楽死となった.25℃ で培養した分離菌のサブロー培地上の集落はオレンジ色であった.ポテトデキストロース (PDA) 寒天培地上の集落は,はじめオレンジ色,2 週間目には黒色を帯び,裏面はオレンジ色であった.顕微鏡的には無色透明な菌糸に直生した菌糸様のフィアライドから楕円形の分生子が集塊となって着生していた.培養の進んだ PDA スラントでは褐色菌糸を認めた.本菌の最高発育温度は 42℃ で,各種抗真菌薬に耐性であった.本症例はヒトと動物を通じて我が国で初の L. hoffmannii による全身感染と思われる.
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© 2005 日本医真菌学会
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