日本医真菌学会総会プログラム・抄録集
Print ISSN : 0916-4804
第49回 日本医真菌学会総会
セッションID: P-134
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我が国の洞窟探検家の抗ヒストプラスマ、抗トリコスポロン抗体価と洞窟入洞後の呼吸器症状との関連について
*菊池 賢杉田 隆池田 玲子亀井 克彦槙村 浩一新見 昌一上原 至雅
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抄録

国内発生が疑われるヒストプラスマ症について、起因菌 Histoplasma capsulatum の定着が想定される環境に接する機会の多い洞窟探検家に対する血清中の抗ヒストプラスマ抗体、抗トリコスポロン抗体等の測定を行った。
2004 年 8 月 20-22 日に北九州市平尾台で開催された第 30 回日本洞窟学会総会に参加した洞窟探検家 100 名(国内 79 名、韓国 21 名)を対象に採血を行った。このうち 19 名については洞窟入洞前ならびに入洞 24 時間後の採血を併せて行った。得られた血液はラテックス凝集法ならびに免疫拡散法による抗ヒストプラスマ抗体、抗 I、II、III 型トリコスポロン抗体、白血球数、好中球数、高感度 CRP、過敏性肺臓炎のマーカーである KL-6、SP-D を測定した。非洞窟探検者の対照として東京在住の健常人ボランティア 48 名の採血を併せて行い、同じ項目について検査した。
洞窟探検家 100 名、ならびに非洞窟探検家対照から抗ヒストプラスマ抗体は検出されなかった。この結果から、我が国の洞窟環境がヒストプラスマに汚染されている可能性は低いものと考えられた。一方、洞窟内コウモリグアノから夏型過敏性肺臓炎の原因としてよく知られているトリコスポロンが優勢菌種として検出され、洞窟探検家を対象に行ったアンケート調査でも洞窟入洞後に何らかの呼吸器症状を呈した人は 16% に認められたことから、洞窟入洞後の呼吸器症状とトリコスポロンの関連性を調査した。その結果、対照者と比べ洞窟探検家の血清中のIII型トリコスポロンに対する抗体価は有意に高く、入洞と関連した呼吸器症状の既往歴のある洞窟探検家では SP-D が有意に高値を示した。今回 19 名に実施した洞窟入洞前後における上記検査項目の比較では入洞後にCRPが有意に上昇していた。洞窟入洞後に発症する洞窟探検家の呼吸器症状には洞窟環境中のトリコスポロンが何らかの関与をしている可能性が示唆された。
非会員共同研究者:佐賀大農学部・染谷 孝、都立大理学部・浦田健作

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© 2005 日本医真菌学会
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