抄録
Candida albicans の主な抗原性は細胞壁最外層に存在するマンノースのみから成る多糖であるマンナンが担っている。この構造は Saccharomyces cerevisiae の細胞壁マンナンと基本骨格は共通であり、タンパク質の Asn 残基に N-グリコシド結合でインナーコアと呼ばれるオリゴ糖を介して α-1,6 結合からなる長い主鎖が存在し、これに α-1,2 および α-1,3 結合からなる側鎖がたくさん結合した櫛形構造である。大きく異なる点は Candida 属では側鎖にさらに β-1,2 結合でマンノースが結合していることである。この Candida マンナンの特徴といえる β-1,2 結合マンノース残基の存在様式を詳細に調べると、次の 3 つのタイプに分類することができる。
1)側鎖の途中にリン酸基を介して結合する β-1,2 結合のみから成るマンノオリゴ糖
2)側鎖の非還元末端側 α-1,2 結合マンノースに直接結合する β-1,2 結合マンノオリゴ糖
3)側鎖の非還元末端側 α-1,3 結合マンノースに直接結合する β-1,2 結合マンノオリゴ糖
1)のタイプのβ-1,2結合マンノース残基は C. albicans の serotype A および B の菌株に共通の抗原であり抗原因子 5 の本体であるのに対して、2)のタイプの β-1,2 結合マンノース残基は serotype A の菌株に特異的に存在しており抗原因子 6 の本体となている。この抗原構造は C. albicans 以外に C. tropicalis, C. glabrata, C. lusitaniae に含まれていたが、その側鎖の長さは異なっていた。一方、3)のタイプの β-1,2 結合マンノース残基は C. guilliermondii, C. saitoana に含まれていた。C. albicans や C. guilliermondii マンナンの側鎖には、さらに α-1,6 結合による分岐も存在しており、S. cerevisiae のマンナンと比べてかなり複雑な構造となっている。
β-1,2 結合マンノース残基を含む分子は C. albicans マンナンの主抗原として働くだけでなく、Candida 菌の細胞への接着やサイトカイン産生誘導などの生物活性も調べられているので、これらについても紹介する予定である。