日本医真菌学会総会プログラム・抄録集
Print ISSN : 0916-4804
第49回 日本医真菌学会総会
セッションID: SI-6
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難治性の深在性真菌症に対する最近のアプローチ—糸状菌感染を中心に
当院における慢性型肺アスペルギルス症の診断と治療
*小川 賢二
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抄録

慢性型肺アスペルギルス症は肺結核治癒後の遺残空洞内に発生する頻度が高い。1996 年 から 2001 年の国立病院機構全国アンケート調査では、先行疾患の約 50% が肺結核症であった。当院における 1996 年度調査では 29 症例中 26 例 (89%)、2004 年度調査では 30 症例中 26 例 (87%) に肺結核既往歴を認めた。本症の診断には、レントゲン画像、喀痰検査、血清学的検査が主に行なわれている。上記 59 症例の画像所見は、菌球型が 47%、空洞壁肥厚型が 32% を占めた。喀痰培養で検出した菌は A. fumigatus が 78%、A. niger が 13%、A. flavus が 2% であった。血清学的検査では、沈降抗体陽性率が 81%、抗原陽性率が 11%、β-D グルカンが基準値を上回った症例が 39%、アスペルギルス特異的 IgE 抗体が基準値を上回った症例が 60% であった。この他、臨床症状として、血痰、喀血が高頻度に認められた。次に治療法であるが、抗真菌剤の全身投与、局所投与が行われていた。抗真菌剤としては主にアムホテリシン B、イトラコナゾール、ミカファンギンが使用されていた。この他補助療法として、エラスターゼ阻害剤であるミラクリッドの併用や、アレルギー的要素が関与していると考えられる症例にはステロイドの併用も行なわれていた。ミカファンギンは慢性壊死性肺アスペルギルス症にたいする有効性が高く、使用量、使用期間、併用薬などの検討を加え本シンポジウムにて報告する予定である。
 著者らは、第 40 回の本学会シンポジウムにて、アスペルギルス属の産生するエラスターゼが病原因子に関与していることを発表した。その後さまざまな検討を加える中で、菌自身が産生するエラスターゼ阻害物質を発見した。この物質は分子量 7525.8 であり、各種エラスターゼに対する阻害活性を調べたところ、A. fumigatusA. flavus 由来のエラスターゼに対してはほぼ 100% の阻害活性を示した。なお、ヒト好中球由来エラスターゼに対して 72.8%、ブタ膵由来エラスターゼに対しては 5.5%、緑膿菌由来エラスターゼに対しては阻害活性を示さなかった。ミラクリッドでは高濃度にしても 60% 程度しか阻害活性が得られず、臨床効果を得にくい状況にあったが、本物質の発見により新しい治療法の開発につながる可能性も出てきた。今後さらなる検討を加え、報告する予定である。
共同研究者:奥村欣由,二改俊章(名城大・薬・微生物)

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© 2005 日本医真菌学会
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