抄録
侵襲性アスペルギルス症の主たる起因菌である Aspergillus fumigatus における病原因子について検討した.これまでに病原因子として報告されたものの中からプロテアーゼ,ロッドレット,分生子カタラーゼならびに菌糸カタラーゼの4者を選び,遺伝子離断法により各因子の単独欠損変異株および後2者の重複欠損変異株を作成し,表現形ならびに感染実験における病態について検討した.
この結果,菌糸カタラーゼ欠損株のみに親株と比して持続した病原性の低下が認められた.また,ロッドレット欠損株では,感染初期に病変の拡大が抑制される傾向をみたが,感染後期には親株で形成された病変と同じく,肺に広範な壊死が認められた.侵襲性アスペルギルス症の成立に関与する本菌の病原因子としては,菌に由来する組織障害性因子よりも菌自体を宿主の感染防御機構から防御・回避する因子が重要な働きを担っている可能性が示唆された.