抄録
Pneumocystis jiroveciiは培養困難な真菌であり、鏡検検出率が低い。近年ではヒトからヒトへの水平感染や健常者でのcolonizationが報告されている。その補助診断法としてPCR(polymerase chain reaction)法が活用されているが、簡便性に欠ける等の問題点がある。それを解決する目的で新規遺伝子増幅法:LAMP(Loop-mediated Isothermal Amplification)法が開発された。本法は、1種類の酵素を使用して一定温で反応が進行するDNA増幅法である。6領域を認識する4種類のプライマーにより感度および特異度が高く、短時間の検出が可能である。今回、18S ribosomal DNA塩基配列から本菌特異的なプライマーを設計し、LAMP法によるPneumocystis症の遺伝子診断法を開発した。鋳型量100コピー/tube以上あれば30分以内で安定な検出が可能であった。Candida属やAspergillus属等の他の真菌との間に交叉反応は認めなかった。リアルタイム蛍光検出時に熱解離曲線の解析を行えば、非特異的な反応やプライマーダイマー増幅を鑑別しうる。反応結果は、リアルタイム解析の他に、蛍光試料や濁度の利用による目視判定も可能であり、簡便な方法である。気管支肺胞洗浄液や喀痰等の臨床検体における検討結果も併せて報告する。