日本医真菌学会総会プログラム・抄録集
Print ISSN : 0916-4804
第50回 日本医真菌学会総会
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第50回日本医真菌学会総会
招請講演
  • David W. Warnock.
    セッションID: IL
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
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    The last two decades have seen unprecedented changes in the pattern of serious fungal disease. Infections with the major opportunistic pathogens are increasing in incidence, new pathogens are being reported in unprecedented numbers, and drug-resistant pathogens are emerging. The HIV epidemic is a major factor that has contributed to the dramatic increase in the occurrence of IFI, but medical developments, such as the widespread use of immunosuppressive agents in transplantation and cancer treatment, have also resulted in an increase in size of the population at risk.

    Enhanced surveillance is essential to improve our understanding of the epidemiology of IFI. Although passive surveillance has been conducted in a number of countries, this often underestimates incidence rates and healthcare costs, and can lead to inaccurate description of risk factors for fungal diseases. Active surveillance is expensive and difficult to conduct, but it has enabled accurate incidence rates to be determined for a number of opportunistic IFI.

    Sentinel and population-based surveillance programs have documented significant changes in the rates of Candida bloodstream infections (BSI) among different patient groups, with the emergence of non-albicans Candida species as important pathogens. More cases of Candida BSI now occur among critical care patients than are diagnosed among neutropenic cancer patients or stem cell transplant (SCT) recipients. C. glabrata has become the second most common cause of Candida BSI in the USA, now accounting for 20-25% of cases. However, for reasons that are not well understood, C. glabrata remains an infrequent cause of Candida BSI in Latin America and Asia, where C. parapsilosis is the second most frequent organism. The emergence of C. glabrata as an important cause of Candida BSI is of concern because of reports that about 10% of incident bloodstream isolates of this species are resistant to fluconazole.

    An uncommon infection before the HIV epidemic, cryptococcosis has emerged as an important cause of illness and death among persons with AIDS. In the USA, population-based surveillance documented the declining incidence of cryptococcosis during the 1990s, largely as a result of improvements in antiretroviral drug treatment. In contrast, in resource-limited countries with large HIV epidemics, the burden of this disease is increasing.

    Surveillance programs have begun to provide important information about the incidence of invasive aspergillosis (IA) and other serious IFI after SCT. In a report from the TransNet program, the aggregate cumulative incidence of IA at 19 transplant centers throughout the USA, in 2001 and 2002, ranged from 0.5% after autologous SCT, to 3.9% after transplantation from an unrelated donor. Wide variations in incidence were seen between different centers. Many factors could account for this, including variations in rates of follow-up and diagnostic practices between sites. Transplant- and host-related factors may also impact the incidence of IA at individual centers.

    A number of other IFI have been seen after SCT. Between 2001 and 2003, IA, zygomycosis and fusariosis accounted for 68%, 8%, and 6%, respectively, of the identified mould infections reported to the TransNet program.

    IFI exact a tremendous toll in terms of human life and healthcare costs, despite the fact that these diseases are still under-diagnosed. Establishing and maintaining surveillance programs for IFI, both on a national basis and within individual medical centers, will be essential if we are to determine the burden posed by these diseases. Together with risk-factor studies and cost-effectiveness analyses, this should provide the information needed to develop appropriate intervention and prevention strategies.

日本医真菌学会50周年記念講演
―わが国における医真菌学の歩み―
  • 山口 英世
    セッションID: MI
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
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    わが国の医真菌学の発展に中心的役割を担ってきた日本医真菌学会は、本年創立50周年を迎えた。本学会の半世紀の歴史の重みとともに、医真菌学の重要性がますます大きくなっている現状に新たな感慨を覚える。それと同時に、本学会創立の遙か以前からわが国における医真菌学が辿ってきた道程にも思いをはせざるを得ないのである。 丁度40年前、本学会創立10周年にあたって故高橋吉定名誉会員は「わが国医真菌学の回顧」と題する記念講演を行った。そのなかで高橋博士は、第1期(明治20年頃?大正期末)、第2期(昭和期初頭?昭和20年)、第3期(昭和21年以降)、の3つの発展段階に分け、それぞれの時期の特色としてヨーロッパの医真菌学の影響が強いこと、太田正雄によるわが国独自の医真菌学の確立、および米国の医真菌学の影響が強くなったこと、をあげている。この第1期と第2期は、真菌症といえばほとんどすべてが表在性真菌症とくに皮膚糸状菌症であり、したがって研究の対象となる真菌も皮膚糸状菌にほぼ限られ、もっぱら光学顕微鏡的形態学に基づく分類学が主流となっていた。それを代表する研究者が太田正雄であり、彼の優れた研究者、教育者としての活躍によってわが国の医真菌学の基礎が築かれることとなった。 高橋博士がいう第3期は、日本の医真菌学にとっても大きな変革の時期であった。それをもたらした最大の原因は、昭和30年代に顕在化した全身性、侵襲性のカンジダ症やアスペルギルス症をはじめとする深在性真菌症の発生率の急激な上昇である。それまでほとんど皮膚科領域でのみ扱われていた真菌症が、今や大半の臨床医学領域が直面するより深刻な問題と化し、昭和30年の文部省科学研究費総合研究「カンジダ症」班の発足に続いて、翌年本学会の設立をみるに至った。 さらに昭和期後半には、生物学のあらゆる分野において研究もその方法論も急速に進歩した。生物学の様々な知識と合わせて、微細形態学(電子顕微鏡法)、生理・生化学、血清・免疫学などの新しい手法の導入によって、医真菌学の基礎研究および臨床研究は飛躍的に発展したのである。加えて、有用な抗真菌薬の相つぐ開発と実用化は、この発展をさらに加速させることとなった。これらの状況を背景に、皮膚真菌症から深在性真菌症へと診療・研究の対象が拡大するとともに、従来主流とされた分類学をはじめとする真菌生物学(菌学)中心の研究から、新しい診断法、治療法の開発を目標とする臨床応用的研究へと流れが変わった。 続く平成の時代に入って、医真菌学は第4期ともよぶべき新たな発展段階を迎えた。その原動力はいうまでも分子生物学(遺伝子操作、ゲノミクス、プロテオミクス)とコンピューター技術(インフォマティクス)の急激な勃興と進歩であり、医真菌学研究の分野にも大きなブレークスルーをもたらしつつある。
  • 森 健
    セッションID: MII
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
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    医学情報は蘭学として僅かながらオランダから入ってきていたが、所謂近代西洋医学に関する本格的な教育は、明治に入って政府のお雇い医師によって開始された。医真菌学の進歩に関して、日本医真菌学会創立10周年記念講演において、高橋吉定教授が「わが国医真菌学発展の回顧」と題し、第2次世界大戦末までを2期に分けて講演されている。即ち明治20年代から大正末までの約40年を第1期、昭和に入って終戦までを第2期とし、皮膚科領域に関するものを中心に、内科領域の真菌別本邦報告第1例についても触れておられる。それによると真菌感染症の報告は、放線菌感染症に関するものが初めで、その後接合菌症例が続いている。 戦後に至り全身性真菌感染症は、抗生物質の開発による菌交代症としてのカンジダ症、また昭和29年ビキニ環礁におけるアメリカの水爆実験で被爆した第5福竜丸の乗組員の方が白血病を発症し、アスペルギルス症で死亡されるなど極めて徐々にではあるが注目されるようになって来た。しかし演者が卒業した昭和40年代でも真菌を雑菌として扱う向きがあったのも事実である。診断に関しても、汚染を避けて病巣から採取した検体の培養で真菌を検出する以外方法が無かったが、アスペルギルス抗体検索、真菌細胞膜抗原であるmannan抗原、galactomannan抗原やCryptococcus の莢膜多糖体抗原などの抗原検索法、更にはLimulus testを応用し、定量でき治療効果の判定も可能な(1-3)-β-D-glucan抗原検索法などの血清(漿)学的補助診断法が開発されたほか、polymerase-chain reaction法による抗原検索が可能になり、真菌症の早期診断が可能になって来た。一方、治療薬として1962年amphotericin B(AMPH-B)が発売されたものの、副作用が強く十分量を投与出来ず、治療に難渋する時代が続いたが、1979年にflucytosineが発売され、両者の併用が行えるようになり、1986年にアゾール系薬剤であるmiconazole、次いでfluconazoleやitraconazole(ITCZ)が、2002年にはキャンデン系薬剤micafunginが発売され、その後fosfluconazole、voriconazoleと続き、本年6月にAMPH-Bの副作用を軽減したliposomal AMPH-B(AmBisome)が発売され、今後ITCZのoral solutionや静注剤の発売が予定されており、真菌症の治療に薬剤選択の幅が広がり、その予後が期待できるようになった。このような流れを基に、内科領域における医真菌学の歩みを述べる。
  • 高橋 久
    セッションID: MIII
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
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    五十年前、医真菌学会が始められた時代には我が国は戦後の混乱から未だ脱しきれず貧乏のさなかにあった。それでも医真菌学会が皮膚科関連学会中最も早く始まったのは戦争中の混乱期にもこの学問に興味を持つてきた人が我が国に少数ながらおられたからであろう。その後、この簡単そうで奥深い真菌感染症の学問は次第に同好の士を増やして着実な歩みを進めている。
    医真菌学といっても守備範囲が広いので主な項目に分けて五十年の歩みをたどり、将来の展望を描いてみたい。1.症例、2.分類・同定、3.菌体構造・機能、4.環境内分布・真菌相、5.動物真菌症・動物モデル、6.治療、7.Malassezia関連疾患から見た生体防御と展望。
    真菌感染症は弱毒菌感染症であって、微妙な生体防御機構の研究に適しているので特に上記のうち7.生体防御に重点を置いて今後のこの学問の発展を展望したい。
    自然免疫について
    現在の免疫学では生体防御の主役はリンパ球とされている。しかしリンパ球は脊椎動物における究極の生体防御のために発達した細胞であって無脊椎動物である昆虫などには存在しない。まして植物は如何にして侵入する微生物と戦うのであろうか。われわれは以前皮膚抽出物に強力な殺Candida作用があることを学会誌に報告した。表皮細胞は堅固な角質を生産して物理的に生体を保護するとともに、抗菌物質を生産して侵入する外敵微生物から生体を守る働きがある。表皮細胞は多数が集まって層状構造の組織を形成しているが、植物組織も、無脊椎動物の外皮組織や消化管などの内腔上皮組織も同じ多細胞壁の構造を形成している。このような部位に弱毒菌が侵入した場合、局所組織はよそからの浸潤細胞の助けを借りることなく侵入微生物を局所組織細胞の生産する抗菌物質だけで侵入菌の発育抑制や殺菌をし得ると考える。これが侵入微生物に対する宿主の生体防御の第一線であろう。浅在性白癬の症状はその表皮細胞による防御過程を示す身近なモデルである。微生物の侵入力が更に強ければ骨髄などの造血臓器からの浸潤細胞が出動してこの第一線の防御を助けるであろうし、更に強ければ脊椎動物においてのみリンパ球が活性化してサイトカインを出して局所細胞の抗菌物質の生産を飛躍的に増加させると考える。この場合白癬ではトリコフィチン反応が陽転して局所の炎症は突然激化すると同時に年余にわたって不治だった白癬は間もなく自然治癒する。真菌学的諸経験に基いて以上の生体防御機構を提唱したい。
  • 奥平 雅彦
    セッションID: MIV
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
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    日本医真菌学会が創立されたのが1956年10月で、翌1957年12月に第1回日本医真菌学会総会が開催された。その前後の時代における本邦病理学領域での真菌症への対応や私の症例経験等を振り返ってみたい。日本病理学会における真菌症に関する最初の報告は、三田村篤四郎 (1914)による「肝臓膿瘍内に発見された1種のストレプトトリックスに就いて」である。1930年11月、東京駅で暴漢に腹部を撃たれた浜口雄幸首相は、翌年8月腹部放線菌症で逝去された。1950年頃迄に病理学領域で報告された真菌症の殆どは放線菌症であったが、肺アスペルギルス症 (1939)や播種性スポロトリコーシス(1942)、中枢神経系の醸母菌病 (1943)および内臓醸母菌症(1943)の報告も行われていた。現時点で最も関心を集めている内臓の日和見真菌感染が相次いで報告されるようになったのは1952年以降のことである。東大病理学教室の研究生であった私は1952年春、東大病院では最初のカンジダ症例の病理解剖を担当した。これが内臓真菌症との邂逅であった。PAS染色はまだ導入されておらず、病巣内真菌の検出には大変苦労した。同年に組織された文部省総合研究「糸状菌症班、1952∼1954(班長:高橋吉定教授)」に班員として参加された三宅仁教授のご指示により、この症例を班会議で報告し、その後、明治以来の教室剖検例に記載されている内臓の真菌感染病変を抽出して、その集計を行った。1953年3月、ビキニ環礁での水爆実験に遭遇、被爆された第五福龍丸無線長の久保山愛吉氏が、同年9月に国立東京第1病院で逝去された。同病院病理部長の要請を受けて病理解剖の応援に行かれた三宅教授の指示で私は培養検査を行い、肺炎病巣から純培養状態で分離したのが Aspergillus fumigatus 久保山株である。空中雑菌の可能性を否定するために、病原性が強い Candida を対照として家兎への感染実験を行い、Candida より強い病原性があることを確認した。感染病巣標本の観察から、CandidaAspergi1lus は組織学的に鑑別可能と考え、その旨を糸状菌症班で報告した。私の主張は笑い飛ばされてしまったが、その所見を急いで発表した(1955)。その報告が誤りでないことを自ら証明したいという思いが、無医村の医師になりたいという本来の夢を忘れさせ、その後における内臓真菌症との長い、深い関わりあいを持つ転機となった。参考書が殆どなかった時代には、糸状菌症班ならびにカンジダ症班 (1955_から_1957、班長:堂野前維摩郷教授)の班員の先生方から、また、本学会の遇去50年間に多くの先生方から私はご教示、ご鞭燵とご支援を受けた。研究には研究者の連繋がいかに重要なことか、今でもしみじみと感じている。お世話になった方々への感謝を込めて想い出を述べてみたい。
  • 宮治 誠
    セッションID: MV
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
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    現在、人および物資の世界的規模での交流はこれまで私達に縁がないと思われていた病原性の強い真菌による「輸入真菌症」の危険性を現実のものとした。なお輸入真菌症はcoccidioidomycosis, histoplasmosis, penicilliosis marneffei, paracoccidioidomycosis, blastomycosisの5疾患を指す。  1970年代の初期、著者は近い将来これら輸入真菌症、特にcoccidioidomycosis が日本において問題となり、その対策が必要になると確信し、研究に着手した。 Coccidioidomycosis が細菌やウィルス感染と大いに異っている点は本症が発症した場合、医師や看護師より、培養された真菌を取り扱わねばならない検査技師や研究者が危険に晒されることである。糸状菌の発育しているプレートの蓋を不用意に開けただけで、分節型分生子は舞い上がり、室内を汚染してしまう。またcoccidioidomycosisが生息している地域から遠く離れた場所に住み、かつ生息地に旅行したこともない人に発症をみる。綿花を扱う工場の従業員に発症することが多く、本菌の生息地で生産された綿花に付着していた分節型分生子を吸入した結果とされている。本症は人から人、動物から人への直接感染が否定されているため、その危険性にもかかわらず、長らく「法定伝染病」からはずされていた。しかし平成10年10月2日に改定された感染症に関する法律で、coccidioidomycosis は " 四類感染症 " の1つに指定され、届け出義務が必要となった。
    私の研究の動機は単純でただ強毒菌を扱ってみたい、という強い願望と、将来この研究が日本で必要になるという確信であった。以下私が行った研究内容を示す。
     1)菌糸から球状体への変換過程の解明。
     2)何故少ない菌数で感染が成立するのか。
     3)培地上で確実に球状体に変換させる方法の確立。
     4)寒天埋没法を用いた二形性の研究。
     5)Coccidioides immitis の生態。
ランチョンセミナー I
  • 神田 善伸
    セッションID: LI
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
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    造血器疾患自体によって、あるいは化学療法、免疫抑制療法、造血幹細胞移植の結果として、患者は免疫抑制状態に陥る。免疫抑制状態の程度、種類は様々であり、好中球減少、細胞性免疫の低下、液性免疫の低下、貪食能の低下などが複雑に合併することもある。感染症対策として重要なことは、患者の免疫状態を常に把握し、どのような病原微生物による感染症を生じやすいかを予測した上で、対策を考えることである。例えば、同種造血幹細胞移植直後の1ヶ月は、移植前処置の大量抗がん剤投与や全身放射線照射による好中球減少と粘膜障害が危険因子となる。移植後1ヶ月程度で好中球数や粘膜は回復するが、移植後1∼3ヶ月の期間は、急性移植片対宿主病(GVHD)および急性GVHDの治療に用いられるステロイドの投与によって細胞性免疫の回復が遷延し、好中球やマクロファージなどの貪食能が低下する。移植後3ヶ月以降の最大の危険因子は慢性GVHDであり、液性免疫が低下した状態が持続する。 造血器疾患に合併する真菌感染症で、もっとも頻度の高い原因真菌はカンジダ属とアスペルギルス属である。カンジダ属は腸管に定着しやすいが、好中球減少などの免疫抑制と抗癌剤などによる消化管粘膜障害によって血管内に侵入し、血流を介して多臓器に播種する。一方、アスペルギルス属は鼻腔や気道に定着し、好中球減少やステロイド投与などの免疫抑制状態において、肺に侵襲性病変を形成し、血管内に侵入した後に、多臓器に播種する。予防対策を考える際にも、診断時に必要な検査を選択する際にも、患者の免疫状態と、真菌の感染経路を意識して検討することが重要である。 抗真菌薬の種類は年々増加しているが、それらを適切に活用するためには、個々の薬剤の特性を十分に理解し、カンジダを標的とした抗真菌薬と、アスペルギルスにも抗菌活性を有する抗真菌薬の使い分け、毒性による使い分け、予防的投与、経験的治療、推定治療、標的治療での使い分けなどを、明確にしていくことが必要であろう。
ランチョンセミナー II
  • 五十棲 健
    セッションID: LII
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    1956年創立の日本医真菌学会が記念すべき第50回記念総会を迎えた。創立から現在までの約半世紀の間に、世間一般では「水虫を治せたらノーベル賞もの」という表現でその難治性を強調されていた足白癬および難治性白癬についても、今日の水準では、おおむね根治せしめることが可能な疾患となった。すなわち、この50年の間に皮膚糸状菌症は難治性疾患であった時代からまさに治療可能な時代へと変換をとげたことになる。しかしながら、「治せなかった時代」から「治せる時代」へ至る道のりは決して平坦ではない。グリセオフルビンは1939年にOxfordらによって記載されていた抗生物質であるが、これが皮膚糸状菌に有効であることが明確に記載されたのは1958年のことであり、本邦で薬価収載され、処方可能になったのは1962年のことである。これは、グリセオフルビンの有用性に気づき、臨床応用が可能となるまでに20年以上要したということを意味する。もっとも、論文発表から実用化までの期間はわずか数年であり、逆に驚異的に迅速に実用化されたともいえる。難治性白癬に実質有用なイトラコナゾールと塩酸テルビナフィンが長い年月の臨床治験を経て、治療薬の選択肢として追加されたことはさらに記憶に新しい。また、皮膚糸状菌症の概念については、過去に世界各地で用語使用の若干の混乱が認められた経緯がある。欧米と日本で使用法の差も認められる。この点に関しても、今日までに、臨床医学、真菌学を含む生物学全般、および治療の進歩により、50年前にはわかっていなかった様々な事柄が理解できるようになった。今回は、第50回記念総会であることをふまえつつ、皮膚糸状菌症の概念と治療の変遷について、現時点での総括を試みたので供覧させていただくことにしたい。会員の皆様の何がしかの参考としていただければ、至極幸いである。
ランチョンセミナー III
  • 松村 佳彦, 宮崎 義継, 田村 和夫, 河野 茂
    セッションID: LIII
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    2002年12月のキャンディン系のミカファンギン注をはじめとして、アゾール系のボリコナゾールやアムホテリシンBのリポ化製剤といった新しい抗真菌薬が、近年相次いで上市されたことにより、わが国における真菌症治療戦略は更なる進歩が期待されている。そのような状況の中、従来わが国ではカプセル剤のみが使用可能であったイトラコナゾールにも、経口液剤と注射剤が加わることとなった。イトラコナゾールは、カンジダ属をはじめクリプトコックス属やアスペルギルス属にも幅広い抗真菌活性を有するものの、従来のカプセル剤では食事や制酸剤の有無による吸収の変化が認められていた。そのため、急性期や重篤な基礎疾患を有する患者への投与は困難な場合も少なくなかったが、2つの新しい剤型の追加によりイトラコナゾールによる真菌症治療の幅を広げることが可能となった。そこで、イトラコナゾールの経口液剤、注射剤の国内臨床試験成績を紹介するとともに、口腔外科領域と呼吸器領域および血液領域の各専門医にそれぞれの領域における臨床的意義を検討していただき、ご参加の先生方とともに考えながら明日からの日常診療に役立つようなセミナーになることを確信している。
ランチョンセミナー IV
  • 高倉 俊二
    セッションID: LIV
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
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    深在性カンジダ感染症の診断には、細菌感染症より頻度の低い感染症の一つに過ぎないこと、特異的な臨床所見はないことの認識がまず必要である。細菌感染症への合理的診断・治療の延長にカンジダ感染症の早期診断がある。喀痰・尿からの検出は特異性が極めて低く、穿刺液や血管カテーテル類からのカンジダ検出が最大の手がかりである。カテーテル抜去も腹部CTもなく、カルバペネム、グリコペプチドの投与が続いている症例、喀痰からのカンジダに抗真菌薬を投与されている症例は実に多い。 治療においては、薬の選択以前に、原因にも増悪因子にもなるカテーテル類の抜去は最小の労力で直ちに可能であるため最優先であり、予後に対して抗真菌薬以上の影響をもつ。また、抗真菌薬の投与量・投与期間も予後に与える影響が大きい。成人1日量でfluconazole 400mg、amphotericin B 0.5mg/kg、micafungin 100mgといった十分な投与量は予後改善のみならず、未制御感染巣の存在や薬剤耐性を早期に判断するために必須である。投与期間は血液培養陰性化、感染巣の検索と制御、眼内炎の除外ができても2週間は必要である。これまでの臨床比較試験からは3剤の効果の差は少ないと考えられる。各薬剤の特徴を考慮すると、[1]抗真菌薬投与歴や細菌検査歴、[2]腎機能障害や腎毒性のある併用薬剤、[3] 菌種、[4] 好中球減少の有無、などは使い分けるポイントになろうが、その妥当性を検証するためには臨床比較試験が必要と考えられる。 当院で起こった過去3年間の全カンジダ血症66例は17診療科に渡り、消化器外科41%、非消化器系外科32%、内科系27%、平均すると1.3症例/年/科であった。つまり、深在性カンジダ症は特定の診療に関係してのみおこる病態ではなく、科の枠組みを超えたアクションを要する感染症の代表である。当院では感染制御部の臨床介入活動を通してカンジダ菌血症症例の予後を改善させることができた。無菌検体からのカンジダ検出や抗真菌薬の過小投与に対して全病院的に常時監視と介入を行う仕組みを整える価値はどの病院にもあると考える。
イブニングセミナー I
  • Bennett John E.
    セッションID: EI
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
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    The diagnostic guidelines for invasive aspergillosis have recently been revised by the EORTC-MSG, a European-USA group of clinical investigators. The purpose of the guidelines is to provide a consensus that is reproducible and feasible to perform for clinical trials of antifungal agents. The category of "probable" aspergillosis is to include patients with early disease that should receive antifungal therapy despite absence of firm proof of diagnosis. Patients in this group are defined by (1) an immunodepressed state that increases risk of aspergillosis, (2) clinical findings consistent with this mycosis and (3) microbiologic evidence of a mould infection. One change in the criteria from the prior guidelines was to upgrade the significance of bronchoalveolar lavage cultures and specific thoracic CT findings in patients at very high risk of aspergillosis. These patients are recipients of allogeneic hematopoietic stem cell transplant or have had prolonged, severe neutropenia. Another change was to recognize the utility of galactomannan and glucan testing, although definitions of what constitutes a positive test have not yet been decided.
    The guidelines from the Infectious Diseases Society of America omit diagnostic criteria but provide detailed treatment recommendations for the different clinical forms of aspergillosis, as well as brief recommendations about empirical therapy and prophylaxis. Voriconazole is recommended as the treatment of choice for most clinical forms of invasive aspergillosis, with alternatives including a lipid formulation of amphotericin B, itraconazole or caspofungin. Reduction of immunosuppression is advocated as vitally important. Surgery has a role for selected conditions.
イブニングセミナー II
  • 比留間 政太郎
    セッションID: EII-1
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
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    爪白癬の治療は、イトラコナゾール、テルビナフィンなどの新しい経口抗真菌薬の登場で、極めて進歩した。爪白癬の重症度分類(Scoring index for onychomycosis)は、病型、病爪の深さ、厚さなどの臨床因子と爪の伸長速度をもとにスコア化され、治療ガイドラインが提案されている。この評価基準は治療法の選択に役立ち、今後より良い基準が作られることが望まれる。一方、爪白癬の原因である足白癬の治療は、極めて重要であるが、明確な治療ガイドラインはない。足白癬の重症度分類も、定まったものは無いが、我々の私案は、足白癬を病期として早期(趾間の落屑、土踏まずの小水疱)、中期(趾間の浸軟、軽度の角化)、晩期(中等度以上の角化、爪白癬の合併)の3段階、病変の広がりとして、限局(片側の趾間または土踏まずの一部)、中間(片側の足のみ)、広範囲(両足)の3段階に分類し、組み合わせて6段階に分類した。1,2までは外用で十分、3,4は短期の経口剤の併用、5,6では、十分な経口剤の併用が望ましいと考えている。
    既に、われわれは、病院を足白癬以外の主訴で来院した患者の足の診察を行った。足白癬と診断されたものは、25%であり、そのうち59%で爪白癬を合併していた。潜在的足白癬の特徴は、症状スコアは低かったが、重症度分類では高かった。患者背景では、加齢、水虫罹患歴あり、足の形(趾間が閉じている)、成人病の合併あり、革靴の使用有りなどの場合、KOH検査が陽性になる傾向がみられた。また、過去に自衛隊員の足白癬の調査を行っているが、同様の結果であった。
    このように放置されている足白癬・爪白癬患者は、重症度が高く、治療を考えた時、ある程度の目安となる治療指針の作成が望ましい。外用抗真菌薬単独、外用抗真菌薬と経口抗真菌薬の併用の二面より検討する必要がある。足白癬の予防、足白癬の日常生活におけるcontrolの方法の改良、足白癬患者の受診率の向上などを検討する上でも、何らかの足白癬・爪白癬の重症度分類を作る必要がある。
  • 渡辺 晋一
    セッションID: EII-2
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
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    既存の外用抗真菌薬は生毛部白癬や皮膚カンジダ症、癜風に対してはコンプライアンス(服薬遵守)がよいが、足白癬に対しては、コンプライアンスが悪いため、大部分の足白癬患者は再発・再燃を繰り返し、このコンプライアンスの悪さが、足白癬患者が減少しない理由の一つとなっている。そこで患者のコンプライアンスの向上を目指し、優れた薬効と皮膚貯留性をあわせもつ外用抗真菌薬が待ち望まれていた。今回承認、発売されたルリコナゾールはジチオラン骨格を有し、光学活性をもつ新規イミダゾール系抗真菌薬である。本剤は真菌細胞壁の主要構成成分であるエルゴステロールの生合成を阻害し、広い抗真菌スペクトルを有する。Candida属真菌やMalassezia属真菌ばかりでなく、特に皮膚糸状菌に対して強力な抗真菌活性を示す。さらに皮膚貯留性も高いことから、短期の治療でも優れた治療効果をあげることが期待できる。実際モルモット足白癬モデルを用いた動物治療実験を行った結果、ルリコナゾールは濃度依存的に治療効果がみられ、テルビナフィンやラノコナゾールより優れた治療効果を示した。このような基礎データから、ルリコナゾールは既存の外用抗真菌薬の治療期間を半減できると考え、足白癬を対象にビフォナゾールとの比較試験を行った。治験デザインは、1%ルリコナゾールクリームを2週間(その後2週間はプラセボ塗布)、対照薬(1%ビフォナゾールクリーム)を4週間塗布し、塗布4週間後に治療効果を判定した。その結果、ルリコナゾールは治療を中止した後も、皮膚症状の改善と真菌の陰性化率の上昇が認められ、4週間後には皮膚症状改善度と真菌学的効果は対照薬とほぼ同等で、いずれの評価項目とも非劣性が検証された。さらに治療2週間後に直接鏡検で真菌陽性だった症例から真菌培養を行うと、真菌培養陰性化率はそれぞれ、73.2%、49.6%と有意にルリコナゾールの方が高かった。以上からルリコナゾールは良好なコンプライアンスと、より確実な治療効果が期待できる薬剤と考えられる。
ポスター(括弧内番号はセレクテッド・シンポジウム発表を示す)
  • 矢口 貴志, 伊藤 純子, 堀江 義一, 田中 玲子, 松澤 哲宏, 西村 和子
    セッションID: P1(SI-1)
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
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    アスペルギルス症の原因菌として最も重要な Aspergillus fumigatus において、β-チューブリン,ハイドロフォビン,カルモジュリン遺伝子および ITS 領域の塩基配列を決定し、Neosartorya 属や関連菌と合わせて系統解析を実施した。その結果、4 遺伝子ともにほぼ同様の系統樹を示し、Section Fumigati に属する菌種は 6 つのクラスター (1) A. fumigatus が属する菌群、(2) A. lentulusA. fumisynnematus が属する菌群、(3) A. fumigatiaffinisA. novofumigatus が属する菌群、(4) 既存の種とは異なる菌群、(5) A. viridinutans が属する菌群、(6) A. brevipesA. duricaulisA. unilateralis が属する菌群に分かれた。これまで、A. fumigatus と同定された臨床分離株の多くは (1) に含まれたが、中には、(2)、(4) に属するものがあった。生育温度は、典型的な A. fumigatus (クラスター(1)) が 50℃ でもよく生育するのに対して、(2) は 45℃ まで、(4)_から_(6) は 42℃ まで成育し、違いがみられた。この生育温度の違いを簡便な分類に活用し、真菌センター保存の A. fumigatus と同定された菌株の見直しを実施し、非典型的な菌株においては抗真菌剤に対する感受性試験を実施した。
  • 矢口 貴志, 堀江 義一, 松澤 哲宏, 田中 玲子
    セッションID: P2
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
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    Neosartorya 属は Aspergillus fumigatus などの病原真菌が分類される Aspergillus section Fumigati のテレオモルフで一部はヒトや動物から病原真菌として分離されている。Neosartorya 属は現在 26 種報告されているが、分類には子のう胞子表面の構造が重要視されている。近年、分子生物学的手法が導入されつつあり、系統が異なるが形態的には見分けがつかない種を創設する例も見られる。今回は Neosartorya を分子生物学的手法で解析し既知の種とは異なる系統を示す種について形態学的考察を加え、種の評価をおこなった。方法:報告されている種に加えて土壌などから分離した菌を β-チュブリン、ハイドロフォビン、ITS などの遺伝子を用いて解析を行い、既知の種と異なる系統を示した菌について子のう胞子表面構造等の形態学的観察をおこなった。
    結果:その結果 3 方法とも比較的類似した結果を得た。β-チュブリン遺伝子による分析では Neosartorya 属は 6 クラスターに分類された。また、7 株の菌が既知の種とは異なる系統を示した。これらの菌の形態的特徴を観察した結果、4 菌株は既知の種とは形態的にも異なる事が知られ、新種として報告する事がふさわしいと思われた。また、N. fischeri の変種として報告された var. verrucosa は系統的に N. fischeri と遠い事が判明した。それらの菌の形態的特徴と近縁種との比較検討の結果を報告する。
  • 松澤 哲宏, 矢口 貴志, 堀江 義一, 西村 和子
    セッションID: P3
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
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    目的
     Emericella 属は Aspergillus のテレオモルフの 1 つであり,真菌症原因菌として医学的および発ガン性マイコトキシン生産菌として食品衛生上,重要な属である.これまで,本属の分類は主として SEM を用いた子のう胞子の表面構造を基に行われており,系統関係が充分解明されていない.そこで,分子系統解析を行い,分子系統と従来の分類指標である形態学的知見およびマイコトキシンの生産性の 3 つの指標を用いて詳細な分類を行い,それらの相関関係を検討した.

    方法
     ITS 領域,β - チューブリン,ハイドロフォビン遺伝子およびステリグマトシスチン生合成系遺伝子の 1 つである stcE 遺伝子の塩基配列を決定し,各遺伝子について NJ 法による分子系統解析を行った.得られた系統樹と形態的知見およびステリグマトシスチンの生産性との相関性を検討した.

    結果
    今回使用した 4 遺伝子のうち,β - チューブリン,ハイドロフォビンおよび stcE 遺伝子での解析結果はほぼ一致した.一方,一般に種の分類で用いられている ITS 領域においては,塩基配列の違いがあまり大きくなく,本属の詳細な分類には適さなかった.分子系統と子のう胞子の形態的知見との相関を検討したところ,子のう胞子の赤道面隆起の幅が狭く,レンズ面が滑面である典型的な形態を示す種が 1 つのグループを形成した.さらに,レンズ面に特徴的な隆起を持つ種,レンズ面が網目状になる種,特徴的な付属糸を有する種といった,特徴的な形態を示す種がそれぞれ別々のクラスターを形成し,分子系統と子のう胞子の形態には相関性が見られた.ステリグマトシスチンの生産性については,典型的な形態を示す種,レンズ面に隆起を有する種およびその近縁種に生産性が集中する傾向が見られた.
  • 高山 明子, Itano Eiko Nakagawa, 佐野 文子, Ono Mario Augusto, 鎗田 響子, 宮治 誠, 亀井 ...
    セッションID: P4
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
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    輸入真菌症の1つパラコクシジオイデス症(Pbと略)は中南米に限局する風土病で,危険度レベル3の Paracoccidioides brasiliensis を原因菌とし,我が国では,現在までに18例の報告がある.最近,本菌種に関しても多遺伝子解析に基づいた遺伝子分類がなされ,各種遺伝子情報が充実している.今回,当センターに保存されている臨床分離株(35株)についてrRNA (ITSおよびD1/D2),glucan synthase, chitin synthase,glyoxalase I mRNA, heat shock protein 70 mRNA, 43kDa糖蛋白抗原 (gp43),urease (Ure) 遺伝子の8種について配列を決定し,クラスター解析を行ったところ,ブラジルのパラナ州Pb患者の頸部腫瘤から分離された株(IFM 54648)の配列はいずれの遺伝子においてもアウトグループに位置した.とくに P. brasiliensis の同定に有用とされているgp43では90%以下の相同性で,2004年に発表したloop mediated isothermal amplication method (LAMP法)による同定のためのプライマーセットでは増幅しないことが判明した.一方,真菌の同定に広く使用されているrRNA遺伝子の相同性は99%以上であった.本株は温度依存性の二形性変換をし,最高発育温度は38℃,酵母様細胞は多極性出芽をし,教科書的記載に一致していたことから,形態・生理学的にも本菌種を否定する要素は見当たらない.一方,近縁種の Coccidioides spp.では各種遺伝子の相同性が99%以上であっても別種としているので,今後,この株のような配列を持つ株が多く発見されると,Paracoccidioides 属菌種の新種が記載される可能性があり,新たな遺伝子同定法開発も必要である.
  • 横山 耕治, WANG Li, BISWAS Swarajit
    セッションID: P5
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    ミトコンドリア・チトクロームbは電子伝達系酵素のサブユニットで,ATP生産の重要な役割を果たし,ミトコンドリアを有する真核生物に共通に存在する.従って,チトクロームbタンパク質は機能を保持し,それをコードする遺伝子は機能を維持する制約の範囲で進化を続けてきた.ミトコンドリア遺伝子は細胞質遺伝により引き継がれ,組み換えは起こさない.更に,一細胞当たり複数の遺伝子セットを持つために検出感度が高いなどの特徴を持ち進化の分子時計として期待できる.真菌の進化にとって,宿主と共に化石化した極希な場合を除き,化石はほとんど役立たない.そこで,化石により年代が推定されている真核生物とそのチトクロームb遺伝子のアミノ酸置換率や塩基置換率を利用して,各生物の分岐年代と置換率で標準曲線を作成し真菌の進化系統の解析を試みた.真菌の中で分裂酵母である Schizosaccharomyces 属3種は最も早く分岐し同じクラスターを形成した.その後,子嚢菌類と担子菌系酵母,子嚢菌系酵母,接合菌類および担子菌を含むクラスターに分かれた.担子菌類は解析した402塩基の配列で推定したアミノ酸配列で1アミノ酸が多いことが明らかになった.菌類以外の真核生物(動物,植物)と比較しても1アミノ酸が多い,このことは,子嚢菌類以外の真核生物で一斉に1アミノ酸が欠落したと考えるよりは,子嚢菌類のみが進化の過程で1アミノ酸が付加されたと考えられた.
  • 山田 陽子, 槇村 浩一, 杉田 隆, 大隅 正子, 山口 英世, 安部 茂
    セッションID: P6
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    真菌は従来その表現形質により命名分類されてきた。しかし、近年の分子データの蓄積により、分子系統に基づく種の再編が進みつつある。本研究の対象であるTrichosporon属は、夏型過敏性肺臓炎のアレルゲン、白色砂毛症の起因菌であると共に、深在性トリコスポロン症の起因菌であり、免疫撹乱状態にある患者等に重篤な全身性感染を起こす臨床医学的に重要な担子菌である。真菌の分子分類学的、分子系統学的研究は主に核DNAにコードされている遺伝子を対象に行われ、真菌の系統学はこの15年余りで飛躍的に発展した。そこで本研究では、核外遺伝子mtDNAにコードされているrDNAの部分塩基配列を解析することによりTrichosporon属内の系統関係を明らかにする事を目的とした。本属各菌種の基準株におけるmtrDNA部分塩基配列をダイレクトシークエンスにより決定し、近隣結合法によって樹形図解析を行った。樹形図は、既報の核遺伝子による系統樹と概ね一致し、本属分類の指標となる血清型1および1-3についてはクレイドを共有するものの、ヒト病原菌が集積する血清型2の菌種は独立した一つのクレイドを形成した。本塩基配列による樹形図解析により、核遺伝子による分子系統を補間する情報が期待される。
  • 滝澤 香代子, 福島 和貴
    セッションID: P7
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    【背景・目的】黒色真菌 Phialophora verrucosa の rDNA 解析において,多数の株でコード領域に group I intron (G-I) の挿入を認めた。本課題では系統発生,生態,疫学,また病原性などの観点から G-I について研究を行った。【材料・方法】日本,中国等8ケ国の自然界及び患者由来の P. verrucosa 33株,P. americana 7株を供試菌とし,塩基配列は primer walking 法で解析した。【結果・考察】P. verrucosa の23株で SSU,28株で LSU,またP. americana の2株で両 subunit へのイントロン挿入が認められ,挿入は SSU で5,LSU で3ケ所の特定位置で見られた。S1511 を除く他の7ケ所への挿入イントロンは G-I で,それらは IC1(S943, S1506, L798, L1923) と IE(S516, S1199, L2563) に subgroup 化された。2株(S943)に Hys-Cys box 型 homing endonuclease gene 由来の配列が認められた。両 subunit を通じ9種の挿入パターンが認められた。他菌種の G-I データを組み入れた系統樹から,種内では P. verrucosa を含め各挿入位置の G-I に,菌種間では同一挿入位置の G-I に高い相同性が検証された。病原性と挿入パターンには相関性は明示されなかったが,分離地域との関係については相関性が示唆される結果が得られた。
  • 福島 和貴, 滝澤 香代子
    セッションID: P8
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】ヒト病原性黒色真菌Phialophora verrucosa及びP. americanaは形態学的に酷似するが,異種説も根強い。本研究は両菌種の分類及び株識別指標の確立を目的とした。【材料・方法】自然界及び患者より分離されたP. verrucosa 5株,P. americana 7株を供試菌とした。PCRでIGS領域を増幅後,その塩基配列をprimer walking法により解析した。【結果・考察】両菌種のIGS領域の塩基配列が本研究で初めて明らかにされた。塩基数は約2.5-2.9kbと菌株で違いが認められた。UPGMA法で作成した系統樹は同一クラスター内に両菌種が混在する結果を与えた。塩基配列の検討から,両菌種のIGS配列に共通する2つの特徴的なリピート構造(hexanucleotideのAGT-nt及びvariable internal repeat[VIR]region)の存在を明らかにした。AGT-ntは各菌株で11-23個が検出された。VIRは4種のエレメントE1, E2, E3, E4 (63 bp, 50-52 bp, 21 bp, 94-96 bp)から構成され,更にそれらの構成・配列によりVIR I, VIR II, VIR IIIの3種に類別された。VIRは株識別の有用な指標となる事が示唆され,疫学研究等への貢献が期待できた。系統解析及びIGS VIRの結果は両菌種の同種説を支持する新たな知見と考えられた。
  • 渡邉 晴二, 河崎 昌子, 望月 隆, 安澤 数史, 石崎 宏
    セッションID: P9
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    F. pedrosoi の分子生物学的マーカーとしてはすでにmtDNAの制限酵素分析 (RFLP)の検討で分離株は7タイプに分類されること、またrDNAのITS領域を用いたRFLPで6タイプに分類され、ともに菌の同定・分類に有用であると報告されている。 一方、メラニン合成酵素遺伝子領域において、Cochliobolus heterostrophusBrn1領域が、Exophiala lecanii-corniPKS1 領域の検討が行われている。我々は、PKS1 領域の既知の遺伝子配列をもとにF. pedrosoi に対するPCRプライマーを設計し、その応用につき検討した。 使用菌株は世界10カ国で分離され当教室に保存されていた臨床分離株30株を用いた。Mini prep法で各菌株からDNAを抽出し、PCRによって、PKS1領域(約1887bp)を増幅し、得られたPCR産物を制限酵素(Msp I、Dde)によるRFLP分析を行った。その結果、6 パターンに分類され、他の黒色真菌との鑑別も可能であった。その分類は従来のmtDNA、ITS領域のRFLPによるそれと矛盾しなかった。
  • 久和 彰江, 仲村 健二郎, 青木 茂治
    セッションID: P10(SI-2)
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    [目的] メラニンの産生は,さまざまな菌類で知らており,laccase はその合成に関わっている.Cryptococcus neoformans (Cn)では,メラニンは病原因子のひとつである.われわれは昨年の本学会総会において,Cn laccase 遺伝子 (LAC1)の 多様性について報告した.今回は,菌類のなかでの Cn laccaseの進化的位置について報告する.[方法] 5血清型を含む計55株の LAC1 の塩基配列と全アミノ酸配列を決めた.系統樹は塩基配列からはNeighbor-Joining法で,アミノ酸配列からはMaximum Parsimony および UPGMA 法により構築した.Laccase タンパクの3次元像はSwiss model server によった.[結果] いくつかの菌種と比較したとき,Cn laccaseのアミノ酸配列には挿入部分が見られた.しかし,銅結合部位のアミノ酸配列はよく保存されていた.Cn laccase はCoprinus cinereus (ウシグソヒトヨタケ)のlaccase とはアミノ酸残基数,配列などに違いがあるにもかかわらず,タンパクの3次元構造はよく一致していた.系統樹解析で,Cn laccase は単独の cladeを形成し,他の菌種の laccaseとは異なる進化過程をたどって来たと推定された.会員外共同研究者: B. Valderrama (メキシコ自治大), V. Vidotto (トリノ大), 長舩哲齊 (日体大)
  • 田中 玲子, 伊藤 純子, 知花 博治, 三上 襄, 西村 和子, 矢口 貴志
    セッションID: P11
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    近年の分子生物学的解析の進歩は生物種の系統分類体系を大きく変貌させてきた.古典的な分類・同定は,形態学的あるいは生理学的な手法により行われてきたが,分子生物学的手法を用いることで DNA の塩基配列の相違などから,形態学的,生理学的にはほとんど同一にみえる生物種であってもさらにサブグループに分類することが可能となった.臨床の場面においては感染症の原因菌について,同定はもちろん感染経路などを探索する場合に,このサブグループの情報が非常に有効であることが知られている.本研究では,病原性酵母 Candida albicans について 2 種類の指標(25S genotype と ALTS)を用いて検討した.
    方法:千葉大学真菌医学研究センター保存の C. albicans 1110 株について McCullough 等1) の方法(25S genotype)による A,B,C のタイプ分けと Chibana 等2) の方法を一部改良した ALTS によるタイプ分けの後,分離源情報とを合わせ検討した.
    結果:分離源情報の内,分離国と分離源が明確な株についての比較により以下の点が明らかになった.日本,ブラジル,タイの 3 カ国の比較ではタイにおいて特徴的なタイプの分布割合を示した.分離源においては,AIDS 患者の血液等の内臓由来の菌株で genotype B が高くなっていることが判明した.
    1):McCullough MJ et al.: J Clin Microbiol 37: 417-421, 1999.
    2):Chibana H et al.: J Bacteriol 176: 3851-3858, 1994.
  • 河崎 昌子, 安澤 数史, 石崎 宏, 望月 隆
    セッションID: P12
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    われわれはSporothrix schenckiiのタイプ分けについて、これまでミトコンドリアDNA(mtDNA)の制限酵素切断片長多型(RFLP)分析による方法と、核DNA (nDNA)のリボソームRNA遺伝子のITS領域でのRFLP分析による方法を報告してきた。前者(mtDNA-RFLP)によってはこれまでに31タイプ(タイプ1からタイプ32、30は欠番)が識別され、これがさらに大きく二つのグループ(A群、B群)に分けられている。これは地球規模での疫学に用いられているが、手技が簡便ではない。後者(ITS-RFLP)によってはA群、B群の区別はつくもののB群の全てが同一パターン、タイプ16、タイプ22を除くA群の全てが同一パターンを示している。そこでnDNAで別の領域を用いたタイプ分けを模索して来た。今回、メラニン合成に関与する酵素の一つである還元酵素の遺伝子(second reductase gene)の一部を利用したPCR-RFLP法でITS-RFLPとは異なるタイプ分けを試みた。これまでの14のmtDNAタイプを含む18株の分析では、2種類の制限酵素でそれぞれ2パターンが得られ、これの組み合わせでS. schenckiiは4グループに分けられた。今後更に株数を増やしmtDNAによるタイプ分けとの関係を調べ報告する予定である。
  • 石崎 宏, 河崎 昌子, 安澤 数史, 望月 隆, Guarro Josep
    セッションID: P13(SI-3)
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    深在性皮膚真菌症の1つスポロトリコーシスの原因菌であるSporothrix schenckiiについては感染原の調査、疫学調査等から自然界分離株の報告もある。しかしわれわれはこれまでS. schenckiiとして報告された自然界分離株の多くがS. schenckiiの臨床分離株とは異なる遺伝子型を持つ事、更に病原性が無い事が示され、実はS. schenckiiでは無い事も指摘して来た。 今回スペインの土壌から分離され、S. schenckiiと形態学的に同定された3株の遺伝子型をリボソームRNA遺伝子のITS領域を用いた制限酵素切断片長多型(ITS-RFLP)で調べたところ、3株は同一のパターンを示したが、これまでの臨床分離株のITS-RFLPパターンとは異なった。さらに既に報告されている中国の自然界分離株のパターンとも異なった。そこでこの菌株の病原性の検討を始め、27℃、35℃、37℃で培養したところ35℃、1週間の培養で臨床分離株は発育が認められる一方、スペインの土壌分離株では発育が認められず病原性が無い事が強く示唆された。今後さらに感染実験、ミトコンドリアDNAタイプ、スキンテストなどを検討し報告する予定である。(Ishizaki, Jpn J Med Mycol 43: 257-260, 2002)
  • 伊藤 淳二, 佐野 文子, 亀井 克彦, 西村 和子, 宮治 誠, 三上 襄
    セッションID: P14
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】わが国では輸入真菌症が問題となっており、その中でも最も重要な感染症としてコクシジオイデス症がある。原因菌であるCoccidioides immitisC. posadasii は危険度レベルが3にランクされる病原菌であり、死に至る重度な病気を引き起こす恐れがある。2菌種とも形態的な特徴はなく早期の同定が困難で、また検査室等での取り扱いが危険であることから遺伝子レベルで迅速な同定法の開発が望まれる。本研究では機能遺伝子のTOP2 及びTRF4 に着目し、原因菌の菌種を簡易的で迅速に同定法する方法を開発した。
    【方法・結果】TOP2 及びTRF4 のdegenerateプライマーによってPCRを行い、遺伝子属内変型の解析を行った。その結果この2遺伝子は同定に有効なツールとなることがわかった。これらの遺伝子の塩基配列データを基に、それぞれの種に特異的なプライマーを設計し、PCRベースで視覚的に増幅バンドの数と位置で2菌種を分類することが可能となった。このプライマーセットを混ぜプライマーミックスとして使用し、Coccidioides 属の近縁種にも反応しないことを確認した。このプライマーミックスによりPCR上で他菌種とCoccidioides 属を分類するだけではなく、Coccidioides 属の2種を同定することが可能となった。
  • WANG Li, YANG Yan-qiu, HE Dan, GUO Liang, ZHANG Yun-feng, ZHANG Bo, 横山 ...
    セッションID: P15
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    Objective: To investigate the influential factors of SSR-PCR experiments, the optimal reaction system in fungi was established, which was based for the further research on fungal identification and genetic diversity. Methods: The orthogonal design was used to optimize SSR-PCR amplification system of fungi with four factors (Taq DNA polymerase, DNA template, dNTP and primer). The optimal annealing temperature and cycles of SSR-PCR for fungal reaction were proposed. Results: The notable influence of each factor in different levels was found and the quantity of DNA template was the most effective factor. It is 25μl reaction system which contained 1.0U Taq DNA polymerase, 30ng DNA template, 150μmol/L dNTP, 0.25 μmol /L primer. Conclusion: The method of orthogonal design had been invented to solve multi-factor-controlling problems. It is simple, rapid and efficient to get the optimal conditions of PCR which is an effective method deserving to spread.
  • 遠藤 成朗, 三川 隆, 大澤 宏充
    セッションID: P16
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
    会議録・要旨集 フリー
     臨床材料より白色綿毛状を呈した担子菌系糸状菌と思われる菌類が分離される。担子菌由来の培養株は培地上で子実体を形成させることは困難である。一部の担子菌は新興真菌症起因菌として注目されており、属・種を特定することが必要である。本研究では臨床材料から分離される担子菌の同定法を構築するためにPCRで増幅したITS領域のDNAシークエンスとPCR-RFLP法を検討した。
     ITS領域のDNAシークエンス結果から供試菌20株はAgrocybe 属、Sistotrema 属、Schizophyllum 属、Trametes 属と同定された。この結果を基にITS領域を4種類の制限酵素で切断し、BioNumericsでクラスター解析した。本法での系統樹はITSのDNAシークエンスから推定される遺伝子距離とほぼ一致しており本法は種の同定に使えることが判明した。肺真菌症起因菌であるSchizophyllum commune は菌糸に棘状突起を持つ点において鑑別可能であるが、突起を作りやすい株と作りにくい株がある。本法はこれら双方の株に対して同一のパターンを示し、迅速同定が可能であることが判明した。Trametes sp.は慢性肺疾患患者より分離され、病原菌として関与している可能性も疑われた。
     PCR-RFLP法は手技も簡便で検査コストも低く、形能観察では同定困難なほとんどの担子菌に対しても同定可能であると思われる。臨床材料から検出される担子菌の同定はITS遺伝子に依ったが、子実体由来の菌体を用いた遺伝子同定や菌株の交配試験などの検証が必要と思われる。

    会員外共同研究者:齋藤武文1)、前川二太郎2)、細井美往3)、鈴木真言3)、前田孝一3)、佐藤弓枝3)、金山明子3)、長谷川美幸3)、小林寅!)3)
    1)国立病院機構茨城東病院、2)鳥取大学・農、3)(株)三菱化学BCL
  • 浜野 圭一, 田中 玲子, 西垣 功一, 西村 和子
    セッションID: P17
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    Trichosporon属菌は、夏型過敏性肺臓炎および日和見真菌症原因菌として重要性が増しているが,種および株の識別は困難な課題であり、ルーチンな検査法がない状況である。表現型による識別にはチェック項目が多く、熟練者でさえも識別困難な場合がある。一方、遺伝子型による識別は D1/D2 シーケンス情報が充実してきており、その簡便さから利用が拡大している。しかしながら、D1/D2 が一致してもその他の塩基配列が異なる場合もあり、D1/D2 のような単一遺伝子のみで識別をすることの落とし穴が残っている。
    ゲノムプロフィリング(GP)法は、ランダムPCRの産物を TGGE (温度勾配ゲル電気泳動)で分離展開することにより、簡便迅速に塩基配列情報を反映したパターンが得られ、種および株の識別に有効といえる(第 48、49 回総会「病原性酵母の種同定および株識別へのゲノムプロフィリング(GP)法の応用(1)、(2)」)。
    今回、Trichosporon 属菌を対象に GP 法による種および株の識別を検討した。用いた菌株はT. asahii をはじめとする全14種35株である。
    GPから得られたパターンの目視からは、容易に同一種の類似性を判断することが可能であった。その中でT. asteroides の IFM 48961と 48608 は類似パターン像となったが、他のT. asteroides IFM 48960 および 48559 とは異なるパターンを示し、その後の D1/D2 解析結果からT. japonicumである可能性が浮上した。その他にも GP と D1/D2 解析から菌種名をアップデイトすべき株が以下のように見いだされた。IFM 41129 cutaneumcoremiiforme、IFM 48558 moniliiformefaecale、IFM 48583 montevideensecoremiiforme
    さらに GP から得られたパターンを専用解析ソフトで定量化し、クラスタリングをしたところ、T. asahii 10 株は1つのクラスタを形成し、Trichosporon属の種の識別においても GP の有効性が示唆された。
  • 河合 浩樹, 佐野 文子, 岩堀 裕之, 早川 富博, 西村 和子
    セッションID: P18
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
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    近年,新興真菌感染症の原因菌のとしてScedosporium 属菌が増加傾向にある.今回,肺の菌球症例よりGilgadoらが 2005年に発表した新種 S. aurantiacumと推定される菌株を分離したので報告する.
    患者は73歳男性,下肺野に間質性肺炎,右肺尖部に空洞形成,内部には菌球が認められ,基礎疾患に関節リウマチ,糖尿病を有する.2005年10月に症状悪化の為入院加療.β-D-glu <=0.5 pg/ml,アスペルギルス抗原陰性,カンジダ抗原陰性であった.本年1月から連続して喀痰より同一の白色綿状の糸状菌が培養された.本分離菌株は,PDA,25℃培養でフェルト状,培養と共に中心部から灰色粉状,SDAでは黄褐色,中心部綿毛状,辺縁は葉状,両培地は黄変した.分生子は褐色,卵円形,球形,やや厚壁,細い分生子柄先端に単生,シンネーマからは無色,円筒形の分生子を着生していた.分生子がより丸みを帯び,菌糸側壁から直接あるいは小突起から生じ,最高生育温度は45℃である点が他のScedosporium 2菌種と異っていた.閉子嚢殻,子嚢胞子は産生しなかった.rRNA ITS の624塩基配列と形態からS. aurantiacumと同定された.本菌株の薬剤感受性は,NCCLS M38-A2法によるMIC80はITCZ 4μg/ml、MCZ 0.5μg/mlであったが,他の3剤には抵抗性であった.
  • 高橋 英雄, 植田 啓一, 鎗田 響子, 村田 佳輝, Itano Eiko Nakagwa, 高山 明子, 猪股 智夫, 矢口 貴志, 佐 ...
    セッションID: P19
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
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    日和見真菌症原因菌としてnon-albicans Candida spp.(以後NACと略す)は薬剤耐性菌が多いことからヒトおよび小動物臨床領域で問題となっている.一方,水族館を含む動物園のふれあい動物コーナーにおけるこれら菌種の実態はほとんど調査されていない.今回,水族館で飼育されている,既往歴なし,または前胃真菌炎の既往歴をもつバンドウイルカ(Trusiops truncatus)2頭よりNACを18株分離した.経時的に呼吸孔より呼気,胃液および直腸拭い液をクロモアガーカンジダで室温にて培養,集落を釣菌し,ID32CおよびrRNAのD1/D2領域の遺伝子配列で同定した.その結果C. tropicalis 12株, C. parapsilosis 2株, C. glabrata 1株, C. zeylanoides 1株, Rhodotorula mucilaginosa 2株を分離した.これらの菌株にはNCCLS法による薬剤感受性試験の結果,耐性株が含まれていた.また,C. zeylanoides に関しては,臨床検体としては人獣通じて本邦初分離で,クロモアガーカンジダ平板培地での集落の色の発色性は不安定のためC. albicansおよびC. norvegenesisとの鑑別が必要であった.イルカの呼気やジャンプ動作による飼育水の飛沫で,NACがエアロゾルとして周囲に飛散することは避けられない.また,胃液や排泄物も直接プールで拡散しているので,これら菌種のプール内での分布,耐塩性等の調査は必須であり,現在調査中である.さらにイルカ触れ合い体験時におけるハイリスク者とイルカの接触による感染の危険性も考慮しなければならない.
  • 畑井 喜司雄, 佐野 文子, 西村 和子
    セッションID: P20
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
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    養殖ヤマメに不完全菌類のOchroconis属菌に原因する慢性的に死亡する症例が発生した。罹病魚の外観は腹部膨満を呈する程度であったが、開腹すると腎臓が腫大し、部分的に白斑状を呈していた。腎臓内部には多数の淡褐色の菌糸が繁殖しており、病理組織学的に肉芽種を形成していた。患部からはサブロー寒天培地などで1種類の菌を培養することができた。分離・培養された菌は3隔壁を有する淡褐色の長楕円形の分生子を仮軸状に産生し、分生子の表面には細い棘状突起を有した。これらの特徴から本菌は、Doty and Slater(1946)によって米国のマスノスケから報告されたOchroconis tshawytschaeに近似する種であると考えられた。
     そこで基準株であるATCC 9915とヤマメ株とを走査電顕で詳細に形態を比較検討した結果、ヤマメ株は疣状突起が1種類であるのに対して9915株は大小2種類の突起が存在した。また分生子の形状は、9915株の方が、ヤマメ株よりも細長かった。また、集落の形状や色調も若干異なった。
     さらにヤマメ株のD1/D2 LSU rRNA遺伝子の配列は既知種の配列とは異なり、相同性は80%であった。なお、他の病原性黒色菌の配列にヤマメ株の配列を加えてクラスター解析を行った結果、他のOchroconis属菌と同一のクラスターに位置した。以上のことからヤマメ株はOchroconis属の新種であると判断した。
  • 山口 正視, 大楠 美佐子, 川本 進
    セッションID: P21
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
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     酵母の紡錘極体は動物細胞の中心小体に相当する小器官であり、核分裂の際に中心的な役割を果たす。本研究では、2つの病原酵母 Exophiala dermatitidis および Cryptococcus neoformans の紡錘極体の細胞周期における動態を、急速凍結法と連続超薄切片法を用いて解析し、 Saccharomyces cerevisiaeとの違いを明らかにした。 Exophiala では、紡錘極体はG1 から G2期では2つの円盤状構造物がブリッジで連結された状態で核膜の外側に位置する。核分裂前に円盤状構造物は膨潤し、細胞質微小管と会合する。核分裂期に紡錘極体は核膜内に入り込み、多くの核微小管と会合し、両方の紡錘体極に位置する。終期に紡錘極体は核膜から出て、再び細胞質にもどる。紡錘極体の複製はG1期の初期に行なわれる。 Cryptococcus では、紡錘極体はG1 から G2期ではダンベル状を呈し、核膜の外側に位置する。核分裂時には円盤状を呈し、多くの核微小管と会合して両方の紡錘体極に位置する。核分裂直後に紡錘極体は球状を呈する。紡錘極体の複製はG1期の初期に行なわれると推測される。 このように、ExophialaCryptococcus の紡錘極体の構造および細胞周期における動態には、多くの共通点が認められる。しかし紡錘極体が全細胞周期を通して核膜内に局在し、複製がS期のはじめにおこる Saccharomyces cerevisiaeの紡錘極体とは、構造および細胞周期における動態において大きく異なることが明らかになった。
  • 許斐 麻美, 大隅 正子
    セッションID: P22
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    加圧凍結法は、細胞骨格を含むあらゆる細胞内構造や瞬時に変化する生体現象を保持した凍結固定試料を、従来の急速凍結法より多量に、再現性よく得る事ができ、種々の凍結技法を用いた微細構造解析の利用を容易にした。我々はクライオシステムAlto2500(Oxford)を用いた「加圧凍結・極低温低加速電圧走査電子顕微鏡法」を開発し、凍結固定試料を割断・蒸着し、細胞割断像や細胞膜破断像を簡便に得られようにした。また置換固定を行った後に、乾燥・蒸着して、走査電子顕微鏡により観察する方法も確立した。さらに、細胞構造の明瞭な観察と物質の局在解析を同一の切片上で行う事ができる免疫電子顕微鏡法を開発し、生体膜における膜内タンパク質粒子の挙動を解析できるフリーズフラクチャー・レプリカ・ラべリング法を導入して、物質の局在解析の正確な遂行を可能にした。これらの方法によって、我々は分裂酵母の隔壁形成の過程の三次元的な把握し、細胞膜の破断像からは隔壁形成部位の細胞膜構造を明らかにした。さらに細胞膜における細胞壁合成酵素の挙動を解析し、細胞膜の特に酵母に特有な陥入が細胞壁合成が活発な部位から排除される事実が判明した。また隔壁形成の開始に伴う合成酵素の挙動とそれに関わる細胞内構造の変化を捉えた。真菌の構造に関する新たな知見を得られる可能性を大いに期待出来る加圧凍結法の応用例と合わせて報告する。
  • 大隅 正子, 佐藤 高広
    セッションID: P23
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    細胞の三次元(3D)構造を観察するために、これまで種々の方法が研究されている。細胞を急速凍結後に破断して、走査電子顕微鏡で細胞の内部を観察したり、連続超薄切片の透過電子顕微鏡像を画像処理したりすることによって、3D構造を再構築する方法が、これまで主として行われてきた。また近年、超高圧電子顕微鏡を用いての、トモグラフィ法による観察も試みられている。本報告は、半導体デバイス解析のための主要な手法である、FIBマイクロサンプリング法を生物試料に応用する第一段階として、超薄切片用に樹脂包埋された試料中の任意の細胞を厚切りし、走査透過電子顕微鏡(STEM)を用いて、任意の方向から直接観察することが可能となったことを紹介する。 樹脂包埋された Candida tropicalis の1細胞を、FB-2100 により約0.3μmの厚さの切片を作成し、200kV-STEM HD-2300を用いて、角度を変えながら連続的に記録することによって、細胞の微細構造を、立体的に、動画として、把握し得る。特に細胞壁については、暗視野で観察すると、細胞壁の最外層のマンナンタンパク層の繊維構造と、その内側のグルカン領域の構造とが明瞭に識別でき、これにより分子モデルと対応しながら細胞壁の構造を検討できる。この観察法は、電子顕微鏡の有用性をさらに高める画期的な方法であり、細胞構造の研究への種々の応用が期待される。
  • 李 皓曼, 清水 公徳, 川本 進
    セッションID: P24(SI-4)
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    ハイブリッド型histidine kinase(HHK)は多くの真菌で抗真菌剤に対する感受性,浸透圧調節,病原性,菌糸伸長などを制御することが知られているタンパク質リン酸化酵素である。ヒト病原真菌Cryptococcus neoformansはゲノム解析の結果,7個のHHKをコードする遺伝子をもつと推定された。演者らはこのうち,CnNIK1の構造および機能解析について既に報告を行った。今回,CnNIK1以外のHHK遺伝子(CnHHK2CnHHK3CnHHK4CnHHK5CnHHK6CnHHK7)に関する機能を明らかにする目的で,相同組換えによる遺伝子破壊を試みた。遺伝子破壊に用いる遺伝子カセットはオーバーラップPCRにより構築した。また,マーカー遺伝子としてウラシル合成系遺伝子URA5を用いた。B4500(交配型α)由来の栄養要求性菌株TAD1を用いて形質転換を行ったところ,CnHHK2CnHHK5CnHHK6CnHHK7各遺伝子に関する遺伝子破壊株を取得することができた。それぞれの遺伝子の破壊株についてTLHM2,TLHM3,TLHM1,TLHM4と命名した。これらを異なる交配型の野生型株B3502(交配型a)と交配し,子孫株より破壊遺伝子および交配型aをもつものを得た(RLHM2a,RLHM3a,RLHM1a,RLHM4a)。CnHHK5CnHHK6CnHHK7それぞれの遺伝子について破壊された菌株同士(交配型α×a)による交配を行ったところ,かすがい連結,担子器,担子胞子いずれの形成も良好であったことから,本菌においてこれらの遺伝子は交配に必須ではないことが示唆された。現在,CnHHK3およびCnHHK4についての遺伝子破壊株の取得,CnHHK2遺伝子破壊株の野生型株との交配による子孫菌株の取得について検討中である。
  • 武田 健二郎, Yingqian Kang, 長谷川 太一, 小暮 高久, 矢沢 勝清, 三上 襄
    セッションID: P25(SI-5)
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】すべての微生物に保存され、且つ16S rDNA遺伝子配列 (16S rDNA) よりも進化速度が早いとされるDNAジャイレースのβサブユニットをコードする遺伝子 (gyrB ) 配列を用いた同定・分類研究が1995年に報告された。その報告以降、同定法で最も確実とされるDNA-DNAハイブリダイゼーション法とgyrB の相関性が高いという結果も得られてきている。本研究では、このgyrB 遺伝子配列をNocardia 属全種で決定し、その有用性を検討した。
    【方法】当センターで保存されているNocardia 属全種 (60種) を対象として、報告されているgyrB 遺伝子の Universal primer を用いてgyrB を増幅後、シークエンサー (ABI PRISM 3130) で配列を決定した。決定した配列はGENETYX、ClustalWを用いて解析を行い、系統樹を作成した。
    【結果および考察】Nocardia 属放線菌の菌種間のgyrB の相同性は82.417-99.917%と16S rDNAの相同性と比べて広範囲であった。この結果から16S rDNAよりも詳細な分類が可能になると考えられる。またgyrB 配列内に種特異的な部分が見られたため5-600bpのみの配列を用いた同定・分類の可能性や菌種特異的なprimerの作成等臨床への応用が期待される。
  • 矢沢 勝清, 飯田 創治, 長谷川 太一, 武田 健二郎, 三上 襄
    セッションID: P26
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    これまで、臨床材料から分離されるNocardiaの菌種は生理生化学的特徴の乏しいN. asteroidesが最も多く、次いでN. farcinica, N. brasiliensis, N. novaの順であった。近年、16S rRNA遺伝子の塩基配列の相同性による、Nocardiaの再分類が盛んに行われ、多くの新種が報告されている。N. abscessus, N. asiaticaなどがN. asteroidesから再分類され、新種として確立された。N. asteroidesNocardiaのType speciesであり、1800年にはじめて報告されている。しかし、本菌種は生理生化学的特徴が乏しいため、多くの菌株がN. asteroidesとして同定されてきた(sensu lato)。我々は真菌センターでN. asteroidesとしての保存されてきた菌株の再分類を行い、これまでに16種の新種の報告を行ってきた。真菌センターにN. asteroidesとして保存されてきた200株について再分類および再同定を行った結果、N. asteroides sensu strictoと同定できる株は、46株と極めて少ないことが明らかになった。しかし、最近の臨床由来菌株の中に典型的なN. asteroides の菌株(sensu stricto)の存在が明らかになったので、併せて報告する。
  • 五ノ井 透, 武田 健二郎, 向井 啓, 矢澤 勝清, 矢口 貴志, 三上 襄
    セッションID: P27
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    寄生性の細菌や真菌にとって、様々な酵素反応において中心的な役割を果たす鉄イオンを宿主環境中から得ることは、生存に必須である。また宿主も、鉄の供給を制限することによって、病原菌の増殖を抑制していることが明らかにされてきた。Siderophoreは、様々な菌類によって産生・放出される小分子であり、環境中の鉄イオンをキレートし、菌の細胞内に輸送して菌の生命維持・増殖に役立てる重要な作用を持つ。今回我々は、病原性を持つことが明らかな数種を含む60種の Nocardia 属菌のSiderophore 産生の有無とその分子的多様性について検討した結果を報告する。【方法】放線菌による培地中へのSiderophoreの放出の有無は、菌を鉄のキレート剤であるchrome azurol S (CAS) を含む青色の培地上で培養し、培地の消色反応により検定した。また Nocardia farcinica のゲノム配列等を基にPCRプライマーを設計し、Siderophore 生合成への関与が予測される4酵素の遺伝子をPCR増幅し、ゲル上でバンドを確認した。さらに、薄層クロマトグラフィーにより放線菌培養上清を展開し、CASの消色反応でスポットの位置を確認し、分子種の多様性について検討を行った。【結果】ヒト、植物、魚介類に対する病原性が確認されている菌種、および病原性が報告されていない菌種を含むほぼすべての Nocardia 菌種が、Siderophoreを産生していると予測された。
  • Moo Kyu Suh, Gyoung Yim Ha
    セッションID: P28
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    Background : There have been many studies about concurrent infection with tinea cruris and tinea pedis as a part of dermatophytosis in Korea. However, few studies have been reported about actual percentage regarding the frequency of tinea pedis in patients with tinea cruris and comparison of the etiologic agents in the groin and foot. Objective : The purpose of this study was to investigate the frequency of tinea pedis in patients with tinea cruris and the etiologic agents in the groin and foot. Methods : 189 patients with tinea cruris were examined clinically, frequency of tinea pedis and etiologic agents isolated and identified by cultures on Sabouraud's dextrose agar from September 2000 to August 2005 in Dongguk University Hospital. Results : The ratio of male to female patients was 10.8:1. And most of them were between the twenties and forties. Most (74.6%) of them involved both sites of the groin. Duration of tinea cruris was the most common within one year. The frequency of tinea pedis in patients with tinea cruris was 85.7%. Most of them (69.1%), duration of tinea pedis had longer period than that of tinea cruris. One hundred and thirty nine dermatophytes were isolated from 189 patients with tinea cruris. They were Trichophyton(T.) rubrum (89.2%), T. mentagrophytes (7.2%), Epidermophyton floccosum (3.6%). Of one hundred and sixty two patients with both tinea cruris and tinea pedis, 52 patients (32.1%) had with same species and only four patients (2.5%) had with different species in the groin and foot. Conclusion : Because of the high incidence of concurrent infection with tinea cruris and tinea pedis, we suggest the need of a careful mycological examination for foot in patients with tinea cruris.
  • 澤田 美月, 石崎 純子, 伊藤 治夫, 原田 敬之
    セッションID: P29
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    症例1:49歳,男.17歳時尋常性乾癬と診断され,以後ステロイド外用療法を受けていた.初診の2週間前より,乾癬と異なる皮疹に気付き,ステロイド外用剤にて改善しないため近医より紹介初診となる.初診時現症:躯幹,四肢に類円形の角化を伴う落屑性紅斑が散在,多発する.腋窩,側腹部,臍周囲,股部では角化,潮紅の目立たない粃糠様の落屑性紅斑を認める.各所の皮膚鱗屑の鏡検にて菌糸を証明し,培養にてTrichophyton rubrumを検出した.病理組織学的にも角層内に菌糸を認めた.足白癬,爪白癬の合併も認められた.治療経過:ステロイド外用剤を中止し,テルビナフィン内服療法を開始し皮疹の軽快を認めた.白癬改善後もビタミンD3外用剤のみで乾癬のコントロールは良好となった.症例2:33歳,男.15歳時より尋常性乾癬の診断にて近医で加療を受けていた.ステロイド外用剤,シクロスポリン内服にても皮疹のコントロール不良のため紹介初診となる.当科での治療継続中,頚部に環状の落屑性紅斑が出現した.鏡検にて菌糸を認め,培養にてTrichophyton rubrumの発育を認めた.テルビナフィン内服療法を開始し経過観察中.広範囲な尋常性乾癬において,ときに体部白癬を見逃すことがあるため注意を要する.
  • 竹之下 秀雄
    セッションID: P30
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    症例:44歳男性。2005年11月9日当科初診。約3週間前より顔の人中部に皮疹が出現した。近医で加療(抗生剤の内服と外用)されたが改善せず、当科受診した。初診時、人中部に半米粒大までの膿疱が集簇し、紅斑と腫脹を伴っていた。真菌感染症を疑い、患部の毛根を引き抜いてKOH鏡検を施行したところ、毛根および毛幹の中と周囲に真菌要素が確認できた。サブロー寒天培地に毛根を培養した巨大培養で、白色顆粒状のコロニーが得られた。さらに、スライドカルチャーでは、特徴ある大分生子、小分生子、螺旋体などがみられたため、本例の原因真菌を Trichophyton mentagrophytes と同定した。以上より、本例を T. mentagrophytes による白癬性毛瘡と診断した。2005年11月12日より、塩酸テルビナフィン( 125 mg)1錠 /dayの内服および塩酸ブテナフィンの外用を開始したところ、改善傾向を示し、約1か月投与して軽快した。1997年の日本医真菌学会疫学調査によると、7677例の白癬のうち、白癬性毛瘡は1例のみであったことから、本例は比較的まれな疾患と言えよう。
  • 廣瀬 伸良, 菅波 盛雄, 白木 祐美, 比留間 政太郎, 池田 志斈
    セッションID: P31
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
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    我が国におけるT. tonsurans感染症の拡大は、大きな社会問題となりつつある。我々はこれまでに本感染症の治療と感染予防対策について検討してきたが、その対象はおもに集団感染した高校、大学柔道部(16歳以上)の要請によるものであった。かねてより、本感染症の低年齢層への感染拡大の懸念はもたれているものの、その現状把握はいまだなされておらず、中学生以下の羅患状況の調査とその対策検討は急務である。対象と方法:本研究では、平成17年度全国中学校柔道大会に参加した1039名のうち、本感染症の調査に同意を得た男子218名、女子278名の496名を対象にした。調査は質問紙法とhairbrush法検査を用い、陽性者には専門医での治療を指導した。結果:496例中45例(9.1%)がhairbrush法陽性であり、男子選手については38例(17.4%)の高率であった。また質問紙によると、陽性者の背景因子として、(1)友人に体部白癬「有り」との回答をした者、 (2)体部白癬既往「有り」との回答をしたものが高率であり、柔道競技特性との関わりでは、(3)他校および高校、近隣の道場などで頻繁に練習を行う者、(4)体重の軽い者、 (5)戦績上位入賞者、 (6)関東および九州地区在住者に陽性例が多い傾向があった。考案:中学柔道選手の罹患状況は高率であり、柔道場で交流する小学生柔道選手への感染も危惧される。低年齢層の柔道選手やその指導者、保護者への啓発内容の検討と実施が急務である。
  • 笠井 達也
    セッションID: P32(SII-1)
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
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     仙台市を中心とした宮城県下にTrichophyton tonsuransによる白癬の発生をみるようになって既に5年半が経過した。当初は柔道やレスリングの強豪校と目される高校や柔道専門学校の生徒を中心に集団発生をみ、その後大学柔道部員にも拡大した。しかし本症に対する啓蒙活動によって、その後これらの高校や大学では集団発生はみられなくなり、散発的な発症例も速やかに受診する体制が出来上がっている。他方、その後はむしろ、これらの競技の強豪校ではない一般の高校の柔道部員やレスリング部員、市民の格闘技クラブ員などに発生が認められ、最近ではさらに市内の柔道道場に通う小中学生にも発生がみられるようになった。これらの学校や道場では本菌感染症に対する認識度が低い為に、発症しても放置されて、罹患者を増やし、症状を悪化させている傾向が認められる。自験例を中心にこれらの状況を報告して、参考に供したい。
  • 藤広 満智子
    セッションID: P33(SII-2)
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
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    演者は流行が確認された2002年より、東海地方の皮膚科医に協力を呼びかけ、疑わしい患者の病巣の鱗屑や毛を貼り付けたセロテープを郵送してもらい、患者の早期発見に努めてきた。その結果58例の検体が集まり、うち41例から T.tonsurans が分離された。そのうちわけは、男性36例、女性5例、高校生30例、中学生以下6例、大学生以上5例であった。競技別ではレスリング21例、柔道19例、柔道部員の母親1例と、レスリングが多いのが東海地方の特徴と思われた。またそのプロトコールにより、1)部内に患者がなく対外試合で感染したケースでは1週間後に発症する。2)再発の多いケースは高校3年間に4回発症を繰り返した。3)頭部白癬は丸刈りにして初めて気づく。4)体部から採取したセロテープに毛内に寄生した胞子を認めた。5)1ヶ月テルビナフィンを内服した後でも培養は陽性になる。6)柔道場の畳に長時間正座した後の下腿の病巣から分離されたのは T.rubrum であった。7)セロテープに貼り付けた毛は1年7か月後に培養できる。という情報を得ることができた。
  • 藤田  繁, 望月  隆
    セッションID: P34
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
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    16歳、男、柔道部員。1ヵ月前から右前腕に径約3cmの境界明瞭な鱗屑をともなう紅斑が出現した。皮疹の中央部では自然治癒傾向がみられたが、一部の毛がとぐろを巻いて断裂して黒点を形成していた。Trichophyton tonsuransによる、頭部のblack dot ringwormと似た所見であった。鱗屑の直接鏡検で菌糸と分節胞子がみられた。鱗屑採取時に混入した生毛と、black dotの鏡検で毛内性に配列する無数の分節胞子が認められた。培養にて、T. tonsuransが分離され、rDNAのPCR-RFLPでも、同菌の泳動パターンを示した。T. tonsuransは毛組織に侵入しやすく、生毛部であっても、毛が太ければblack dot ringwormが形成されると考えた。
  • 尾木 兵衛, 西本 勝太郎, 望月 隆
    セッションID: P35
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    少年相撲クラブに所属する9歳男児に生じた Trichophyton tonsurans によるKerion celsi症例を供覧する。患児へは、itraconazole 3mg/kgで36日間、griseofulvin 10mg/kgで60日間の加療を行い、病巣は瘢痕治癒した。引き続く相撲クラブの少年達や指導者の検診とブラシ法検査で、7人中5人に体部白癬が見出され、1人に頭部白癬を認めた。有症状者への治療の傍ら、クラブ関係者全員にミコナゾールシャンプー等を使用させながらブラシ法検査を繰り返している。地方都市であり情報周知の遅れがあり、偏見への危惧等から、検診未受診者や症状の隠蔽、受診の回避などがあり、検診の徹底は公式試合が差し迫るまで困難を極めた。内服薬が小児にとって比較的高価な薬とみなされ、必要性を理解できなかった親が受診を中断した症例や、皮膚科医による治療終了後に再発した症例を経験した。隣接地域の少年相撲クラブ選手の兄に、レスリング留学中の高校生が居ることが判明。間接的な菌の侵淫がなかったかどうか、分子疫学的所見を検索中であるが、社会科学的に競技者間における感染の拡大は避けがたい印象を受けた。本感染症にとり、情報の社会的周知は有効な対応の手段とも考えられた。
  • 高橋 一朗, 飯塚 一, 大坪 紗和
    セッションID: P36(SII-3)
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
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    【症例1】1歳8ヶ月,男児.初診:2005年7月.初診の10日前頃から頭部,背部に皮疹が出現した.家族は酪農業に従事しておりウシの皮膚病が感染したのではないかと心配して当科を受診した.鏡検にて真菌を確認し,抗真菌薬外用,テルビナフィン内服併用で治療を開始したところ,紅斑が拡大し,脱毛が進行した.外用を中止し,テルビナフィンを増量し,8週間後には脱毛を残さずに治癒した.【症例2】27歳,女性.症例1の母親.初診:2005年9月.患児の外来通院に付き添って来院した際に,右下腿の紅色皮疹を主訴に受診した.抗真菌薬外用,テルビナフィン内服2週間で治癒した.【症例3】34歳,男性.症例1の父親.初診:2005年10月.右前腕に紅色皮疹があり,自己判断で妻の外用薬を使用していたが改善しないために受診した.外用薬の継続,イトラコナゾール内服にて治癒した. 3症例とも培養にて T. verrucosum を分離した.本菌による頭部白癬は一般的に炎症症状が強く、ケルスス禿瘡へ移行しやすいとされる。頭部白癬の治療はグリセオフルビンが第一選択薬であるが,テルビナフィン,イトラコナゾールも有効である.しかし乳幼児,小児例では,使用できる抗真菌薬が限られており,またコンプライアンスが悪く内服できないこともあるため,治療に苦慮することが少なくない.小児の頭部白癬治療の問題点について概説する.
  • 久保田 由美子
    セッションID: P37
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    2004年2月、本邦でも爪真菌症に対するイトラコナゾール(ITCZ)400mgパルス療法が認可され、また報道機関を介した啓発運動により、抗真菌剤内服療法を求める、特に高齢者の重症爪白癬患者が増加してきた。そこで我々はITCZパルス療法の趾爪白癬に対する臨床効果と患者満足度について検討した。
    (方法)2004年6月から2006年4月に福岡大学病院皮膚科および協力病院を受診した趾爪白癬76例に対し、scoring index for onychomycosis (SCIO)による重症度分類を用い、ITCZパルス療法の有効性と安全性を検討し、治療3ヵ月目にアンケート調査を実施し、患者満足度も検討した。
    (結果)総症例は76例で3パルス完了は57例、6ヵ月判定例は36例で、安全性評価対象は74例、有効性評価対象は48例であった。平均年齢は56.7±16.9歳(19∼82歳)、SCIOスコアの平均は21.0±7.2(6∼30)であった。爪の肥厚、混濁比とも経時的に減少し、3ヵ月時より治癒例が存在し、6ヵ月後までに38.9%(14例/36例)が治癒した。副作用は肝機能上昇や足の浮腫など18.9%(14例/74例)に認められた。アンケート調査では、約半数が治療費が高いという意見であったが、約70%が連日投与より良いと判断し、80%以上が治療に満足していた。
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