われわれはSporothrix schenckiiのタイプ分けについて、これまでミトコンドリアDNA(mtDNA)の制限酵素切断片長多型(RFLP)分析による方法と、核DNA (nDNA)のリボソームRNA遺伝子のITS領域でのRFLP分析による方法を報告してきた。前者(mtDNA-RFLP)によってはこれまでに31タイプ(タイプ1からタイプ32、30は欠番)が識別され、これがさらに大きく二つのグループ(A群、B群)に分けられている。これは地球規模での疫学に用いられているが、手技が簡便ではない。後者(ITS-RFLP)によってはA群、B群の区別はつくもののB群の全てが同一パターン、タイプ16、タイプ22を除くA群の全てが同一パターンを示している。そこでnDNAで別の領域を用いたタイプ分けを模索して来た。今回、メラニン合成に関与する酵素の一つである還元酵素の遺伝子(second reductase gene)の一部を利用したPCR-RFLP法でITS-RFLPとは異なるタイプ分けを試みた。これまでの14のmtDNAタイプを含む18株の分析では、2種類の制限酵素でそれぞれ2パターンが得られ、これの組み合わせでS. schenckiiは4グループに分けられた。今後更に株数を増やしmtDNAによるタイプ分けとの関係を調べ報告する予定である。