[目的] 好脂性酵母であるマラセチアは、近年アトピー性皮膚炎の増悪因子として注目されている。皮膚ケラチノサイトから分泌されるサイトカインが皮膚の病態に関与すると考えられるが、マラセチアとの関連性については不明である。本研究ではアトピー性皮膚炎患者皮膚から高頻度に検出されるMalassezia globosaと M. restrictaの2菌種について、マラセチア刺激時におけるヒトケラチノサイトのサイトカイン応答をプロファイリング解析した。
[方法] ヒトケラチノサイトは、PHK16-0b株化細胞および初代培養(NHEK)細胞を用いた。サイトカイン分泌は、Cytokine antibody array法により解析した。また、サイトカインの遺伝子発現は、cDNA microarray法により解析した。
[結果と考察] ヒトケラチノサイトにM.globosaを感染させた場合、IL-5、IL-10、IL-13などのTh2型サイトカインおよびIL-6、L-8、RANTESなどの炎症性サイトカインの分泌が認められた。一方、M.restricta感染細胞ではTh2型サイトカインであるIL-4のみの分泌が認められた。さらに、マラセチア感染に伴い、これらのサイトカインのmRNA発現も亢進することが確認された。これらの結果は、M. globosaと M. restrictaはヒトケラチノサイトに対してそれぞれ異なるTh2型サイトカイン応答を誘導することを示しており、それぞれのサイトカインが相乗的に作用することによりTh2免疫応答の誘導を介したアトピー性皮膚炎の増悪に関与しているものと考えられる。