白癬菌の角層中での寄生形態の電子顕微鏡観察の試みは以前より行われており、生毛部白癬でスコッチテープによる剥離法を用いて観察した例や、ラット皮膚に白癬菌を感染させ皮膚での寄生形態を電子顕微鏡で観察した報告がある。しかし、ヒトの爪白癬の混濁した爪甲での寄生形態の走査電子顕微鏡像についてはあまり報告がない。今回我々は爪白癬で直接鏡検の際に採取した鱗屑や爪を用いて、白癬菌の角層中での寄生形態を試みたので報告する。
【材料と方法】
爪白癬、足白癬において直接検鏡の際に採取した鱗屑や肥厚した爪の一部を培養に提出するとともに、2.5%グルタールアルデヒドで固定した。その後、アルカリ処理を行い、緩衝液で洗浄を行い、1%オスミウム固定後に1%タンニン酸による導電染色、1%オスミウムによる後固定を行った。さらに上昇アルコールで脱水し、t-ブチルアルコールで置換したあと、試料を乾燥させ、スパッタコーティーングの後、走査電子顕微鏡観察を行った。
【結果】
角層と角層の間に菌糸が確認できた。一部では菌糸が角層を貫いている像や、菌糸の太さが変化している像も観察された。