抄録
我々は,気管支喘息に合併した担子菌(Basidiomycetes:以下BM)による好酸球性真菌性副鼻腔炎の一例を経験した。ヒトに対する病原性をもつBMとしてはCryptococcosisが報告されているが,むしろTrichosporon asahii、T. mucoidesによる夏型過敏性肺臓炎,Schizophyllum commune(スエヒロタケ)によるABPM(亀井ら)などの疾患において,アレルゲンとして重要であることが知られている. BMの関与が疑われ、喀痰好酸球が増加する難治性アトピー咳嗽(AC)の経験から、1995年来,我々はBMに着目し、1)アレルギー性気道疾患におけるBMの即時型皮内反応陽性率が健常人より有意に高いこと、2)慢性咳嗽患者の咽頭真菌培養で、BMの検出率がCandidaに次いで高いこと、3)BMによる難治性ACで抗真菌薬が有効であった症例,カーエアコンのフィルター交換が有効であった症例を報告してきた。 次の段階として 4) 慢性咳嗽治療抵抗症例には, 環境真菌BMとの関連が示唆される慢性咳嗽患者群(Fungus assosiating cough syndrome; FACS仮称)が,診断不能症例として埋没していること,5) 喀痰培養でBMが検出されるFACS患者の咳嗽には,少量の抗真菌薬が有用であること, 6)20000種類以上あるBMのなかでも,Bjerkandera adusta(ヤケイロタケ;BJA)は,慢性咳嗽に関わる重要な環境真菌のひとつであることが判明した(帝京大学医真菌センター 槇村浩一先生)。地球の温暖化がすすみ,台風の到来が頻回になり,倒木にきのこが群生すると,今後,さまざまな担子菌が,アレルギー疾患の原因あるいは増悪因子として人体に影響をおよぼしてくる可能性がある.Basidiomycetesは,注目すべき環境真菌である.