日本医真菌学会総会プログラム・抄録集
Print ISSN : 0916-4804
第51回 日本医真菌学会総会
セッションID: P-12
会議情報

I. 内臓真菌症
飼育下バンドウイルカの日和見真菌症1例
*植田 啓一宮原 弘和渡邉 紗綾佐野 文子高橋 英雄内田 詮三
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
沖縄美ら海水族館では、呼気、前胃内容液や糞便の真菌学的検査の他、画像診断や内視鏡検査により小型鯨類の真菌感染症の診断を行っている。今回2006年8月に多臓器不全により死亡した、水槽内繁殖個体のバンドウイルカ(Trusiops truncatus、個体名:カナ、雌、年齢9歳、体長249 cm、体重180 kg)の真菌感染症の治療方法と検出された真菌叢ついて報告する。2002年4月、前胃内容液および内壁よりCandida albicansが検出されたために、前胃真菌炎症と診断し、FLCZを1mg/kg/dayの投与を58日間行い治療を終了した。2004年9月、2005年3月および4月に呼気よりC. albicansC. tropicalisが検出され、前胃内容液よりC. albicansが多数検出されたため、起炎菌をC. albicansと推測し、各々FLCZを1mg/kg/dayの投与を22日間、9日間と23日間行い、改善が認められたために治療を中止した。2006年8月、呼気より大量のC. albicansC. tropicalisの他、新興真菌であるSchizophyllum commune、Aureobasidum pullulansが少数ではあるが検出された。この時には難治性細菌感染症を併発しており、抗菌薬とFLCZを1mg/kg/dayの投与を行ったが治療開始4日目に多臓器不全で死亡した。今後は、幼体期からの広範囲抗菌薬投与等による菌交代や、免疫機能の低下について、他の研究機関との共同研究により、迅速な真菌検査方法、適正な薬剤選択および投薬等の治療方法の確立を行う予定である。
著者関連情報
© 2007 日本医真菌学会
前の記事 次の記事
feedback
Top