日本調理科学会大会研究発表要旨集
平成27年度大会(一社)日本調理科学会
セッションID: 1P-23
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ポスタ―発表
長崎県における甘藷料理
かんころ・かんころ餅の地域特性
*安部 春香冨永 美穂子
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抄録

【目的】長崎県には甘藷を使用した多様な郷土料理が各地域に存在する。甘藷を薄く切り茹でて天日に干した干し芋はかんころと呼ばれ、五島列島を中心に製造されている。そのかんころに餅米、砂糖を加え搗き合わせたかんころ餅はカステラ同様、長崎県特産品として販売されている。これらは元来家庭で作られ伝承されてきた食品であるため、製造地域やその製造の歴史的背景はあまり知られていない。そこで本研究においては、かんころの名称分布を含め、かんころ・かんころ餅の製造地域、製造方法、製造の現状を把握することを目的とした。
【方法】かんころの名称分布、その内容および長崎県におけるかんころ・かんころ餅の製造地域について文献、インターネット検索等により地域情報を地図上にマッピングし、その情報から歴史的背景を分析した。かんころ・かんころ餅製造地域を複数選択し、製造方法、地域特性、製造の現状等に関する現地調査を行った。
【結果】かんころと名の付く料理は長崎県以外に佐賀、大分、宮崎、鹿児島県および瀬戸内海沿岸地域に存在した。何れも甘藷を薄く切って天日に干すという点で一致していた。かんころ餅の販売店舗を地図上に示すと五島列島を中心に県内西部に分布していた。何れの地域も沿岸部であることから、かんころ・かんころ餅製造の背景には人々の海路による移動の歴史が関係していることが示唆された。かんころ餅の製造方法に地域差はほとんど認められなかったが、原材料およびそれらの分量比は地域や家庭によって異なっていた。かんころの製造は生産者の高齢化により年々減少しており、今後継承していくためにはかんころ・かんころ餅の消費者を増やし次世代の生産意欲に繋がるような取組みが喫緊の課題である。

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