抄録
千葉大真菌センターに Aspergillus fumigatus として保存されている菌株において、β‐チュブリン、ハイドロフォビン、カルモジュリン遺伝子、ITS 領域の塩基配列を決定し、関連菌と合わせて系統解析を実施した。さらに分子系統と形態学的知見との相関および生理学的性状を検討した。系統解析の結果、4 遺伝子ともほぼ同様の系統樹を示し、Section Fumigati に属する菌種は 5 つのクラスターに分かれた(I.A.fumigatus が属する菌群、II. A. lentulus、A. fumisynnematus が属する菌群、III.A. fumigatiaffinis、A. novofumigatus が属する菌群、IV. A. viridinutans が属する菌群、 V.A. brevipes、A. duricaulis、A. unilateralis が属する菌群)。臨床分離株の多くは I に含まれたが、中には、II、IV に属する菌株があった。IV には Neosartorya udagawae に系統的に近縁なアナモルフ種が確認された。各分生子の表面微細構造は、I、V は刺状突起、II、III、N. udagawae 近縁種は小コブ状の隆起、A. viridinutans は中間的な形状を示した。生育温度は、I が 50℃ でも生育するのに対して、II、III は 45℃ まで、IV、V は 42℃ まで生育し、明らかな違いがみられ、これは簡便な分類に利用できる。各種抗真菌薬に対する感受性は大きな差がなかったが、A. lentulus をはじめ非典型的な A. fumigatus は amphotericin B に対して、MIC が 1-2 μg/ml となり、高めの値を示した。