抄録
25歳、男。主訴は右膝~大腿にかけての皮疹。1999年に同部に転倒により外傷を受けた、その後瘢痕化したが、徐々に増大。2007年11月29日伊勢原協同病院皮膚科を受診し、同年12月5日当科紹介受診となった。初診時、右膝~大腿にかけて16×18cm大、表面疣状に隆起し、びらん、痂皮を伴う皮下結節が集塊状に板状の硬結を呈していた。同部のMRI所見では、皮膚から筋膜下まで及ぶ腫瘤を認めた。組織は真皮内に、好中球、リンパ球、類上皮細胞からなる膿瘍を認め、中心部にPASおよびグロコット染色にて染色される菌塊を認めた。皮膚組織からの培養では、サブロー・ブドウ糖寒天培地で灰白色~黒色の羊毛状のコロニーが得られた。分離菌は、rRNA遺伝子のITS領域およびD1D2領域の塩基配列についてBLAST検索を行ったところ、Exophiala salmonisと99%の一致を見た。エコーおよびCT、MRIにて全身検索も施行したが、反応性と思われるリンパ節腫脹のみで他部位の感染所見は認められなかった。以上よりExophiala salmonisによる黒色菌糸症と診断した。本人が外来での治療を強く希望したため、イトラコナゾール200mg/day内服にて治療中。