抄録
症例:58歳、女。既往歴:血小板減少性紫斑病。狭心症。現病歴:当科初診の1週間前より左踵に虫刺症様皮疹あり。3,4日前より同部が膿疱となりその後左下肢全体に発赤、腫脹がみられ圧痛を伴ってきたため当科初診の前日に近医受診。セフジニル(セフゾン)内服を1日処方されて当科紹介受診。現症:初診時、左踵に膿瘍を認め左下肢にリンパ管に沿って線状に発赤・熱感を認め、左鼠径部リンパ節腫脹も認められた。治療および経過:前医の血液検査では白血球2900、血小板43000と現病に伴う異常値を認め、CRPは1.34と軽度上昇を認めた。発熱などの全身症状を認めず、膿瘍の細菌培養を提出したうえで塩酸セフカペンピボキシル(フロモックス)内服と膿瘍部に抗生剤含有軟膏塗布を開始。3日目にはCRPは0.5、6日目には0.1と正常化し、臨床的にも左踵の膿瘍、リンパ管炎ともに改善を認め、治療を終了した。しかし、提出した細菌培養でノカルジアらしいコロニーの発育が認められた。初診から14日目に再診したがリンパ管炎の再燃なく左踵も瘢痕治癒していた。念のためST合剤を7日間投与し、画像による全身検索を行ったが内臓ノカルジア症の合併は認めなかった。分離された菌はNocardia brasiliensisと同定された。分離されたノカルジアが汚染菌だったとは考えにくく、セフェム系抗生剤の短期内服で軽快した膿瘍型皮膚ノカルジア症と考えたい。