日本医真菌学会総会プログラム・抄録集
Print ISSN : 0916-4804
第52回 日本医真菌学会総会・学術集会
セッションID: SY-6-3
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真菌症起因菌と病原性のアップデート
in situ hybridization法による糸状菌感染起因菌の病理同定
*篠崎 稔中山 晴雄大久保 陽一郎渋谷 和俊
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抄録
病理・細胞診断材料に真菌を確認することは稀ではなく、「深在性真菌症の診断・治療ガイドライン」に収載されているように確定診断としての意義は大きい。しかし、菌種の推定に関して、標本内で観察される菌の形態のみでは限界があることから、病理・細胞診断領域における新たな補助診断法の開発が必要と考えられる。
従来、分子生物学的解析法を応用した補助診断法の開発は盛んに試みられているが、病理・細胞診断材料に応用した報告は少なく、特にin situ hybridization (ISH)法に関する知見は殆どない。ここでは、病原糸状菌の菌種推定を目的としたISH法の病理・細胞診断検体への応用に関する可能性と実用化を前提とした幾つかの問題点について検討したい。
真菌の病原因子をコードする遺伝子が、菌種を特徴づけるマーカー遺伝子として利用可能であることが知られている。我々は、これまでAspergillus fumigatusのalkaline proteinase (ALP : 583bp)およびretrotransposon の一つであるAfut-1のlong terminal repeat (LTR: 245bp) 遺伝子領域を標的としたPCRプローブを用いて組織・細胞診検体を用いた場合のISH法の妥当性について評価してきた。種々のマウス感染モデルから作成したパラフィン切片では、ALPプローブで概ねAspergillus属か否かの鑑別が可能であった。Afut-1プローブを用いた場合、A. fumigatusを特異的に鑑別しうることを確認した。更にpeptide nucleic acid (PNA) をプローブとしてパラフィン切片上のrRNAを標的とした場合、C. albicansを特異的に鑑別することが可能であった。
現在までの検討では形態学的診断の補助としてのISH法の有用性が強く示唆されている。今後、Aspergillus属と形態学的に鑑別が難しいnon-Aspergillus糸状菌と称されるFusarium 属やPseudallescheria 属、事実上補助診断法が存在しない接合菌などに展開することを企図したい。
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© 2008 日本医真菌学会
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