抄録
コッホの原則に示されるとおり、動物感染モデルは感染症における起因菌の確定と病原性の解析に重要な役割を果たし、治療薬の用法・有用性を見積もる上でも欠かせないツールである。表在性真菌症を解析する実験動物としてはモルモットが汎用されており、当施設でもTrichophyton mentagrophytesを起因菌としたモルモット足白癬モデルおよび体部白癬モデルの二種を使用している。足白癬モデルは、ヒトの角化型足白癬に近似した病態を長期間維持する有用なモデルである。一方、体部白癬モデルは、強い炎症応答を生じて最終的に自然治癒するが、短期間で作製できることから薬剤の評価に利便性がある。さらに、国内で蔓延が危惧されているT. tonsurans臨床分離株をモルモット体部皮膚に接種したモデルでは、炎症応答は比較的弱く、病態形成過程では毛孔を中心とした紅斑、丘疹を呈する特徴的な皮膚症状が観察された。感染力は強く、感染局所皮膚の培養試験では陽性率100%(平均感染強度9.8-10)となった。一方、脂漏性皮膚炎の発症に大きく関ると考えられているMalassezia restricta臨床分離株を接種したモルモット皮膚では、顕著な鱗屑を特徴とする病態が観察された。病理組織学的には、表皮の過角化,表皮肥厚および海綿状態が認められ,真皮には炎症性細胞浸潤と毛細血管拡張を認めた.菌は酵母状で角層表層と毛幹周囲に多くみられた。このような脂漏性皮膚炎と類似するモデルにおいて、外用抗真菌薬の治療効果を確認した。