抄録
アスペルギルス症の起因菌として、最近、 A. terreus の分離頻度が増えている。本菌は、アムホテリシンBに対して低感受性を示すため治療困難な場合が多く、臨床上問題となっている。新世代のアゾール系抗真菌薬ボリコナゾール(VRCZ)は、 Aspergillus 属に対して強い抗真菌活性を示す。我々は、これまでに A. fumigatus 発育菌糸に対するVRCZの作用を微細形態学的に検討した結果、VRCZが細胞膜をはじめとする細胞内膜系を破壊して殺菌的作用を示すことを見いだした。今回は、 A. terreus に対するVRCZの作用を形態学的に解析したので報告する。 本菌発育菌糸に種々の濃度のVRCZを作用させた後、菌糸細胞viabilityの変化、および電子顕微鏡による微細形態の変化を観察した。VRCZを作用させた場合には5時間後に菌糸の伸張が抑制されると共に、菌糸側壁に多数の分岐を形成し、濃度および作用時間に依存して死細胞が増加した。一方、細胞内微細構造の変化としては、細胞壁の肥厚や隔壁の形成異常、壁内および細胞壁と細胞膜の間空隙に高電子密度の小胞構造の蓄積が認められ、やがて大部分の菌糸が溶菌した。これらの所見から、VRCZが A. terreus の細胞構造を破壊することによって強力な殺菌作用を示すことが明らかとなった。(会員外共同研究者:蓮見弥生)