体育経営学研究
Online ISSN : 2432-3403
Print ISSN : 0289-7032
原著論文
競技的運動クラブの経営要因分析
品田 龍吉
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1984 年 1 巻 p. 19-29

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抄録
本研究では,競技成績を規定する要因に焦点をあて,活動目標と競技成績から4つのパターンを類型化し,それらに適合した経営管理行動検討のための基本的視点をさぐった。高校生男子を対象として質問紙による調査を実施し,得られたデータに数量化理論第II類を適用して解析を行った。分析は設定した5つの要因群28アイテムからなる説明変数をステップワイズに順次追加投入するという方法によって行った。得られた主要な結果は以下の通りである。1. 競技成績上位群と下位群間では,活動目標の一致度,平均モラール得点とも上位群の方が高い傾向が見られた。平均モラール得点の最も高かったP3(レク志向・上位)と最も低かったP4(レク志向・下位)との差が関与しているものと推察された。しかし,この点に関しては今後さらに競技成績のとらえ方を検討して,分析を深めていく必要があるものと思われる。2. 設定した4つのパターンのうち,最も対照的で異なるのはP1(競技志向・上位)とP4であった。その判別の精度は相関日0.736,判別適中率98.6%であり,設定した説明要因の有効性が示唆された。また,両群の弁別がどのようなアイテムによってなされるか,その重要度を推定すると,クラブ認識関連要因(第IIステップ),モラール要因〜人間関係〜(第Vステップ)で相関比の急上昇をみた。これらの要因が両群の差異を規定していると考えられる。3. 次にP2(競技志向・下位)とP1とが対照的なパターンとして弁別された(相関比0.435,判別適中率89.1%)。相関比は,クラブ認識関連要因(第IIステップ)及びモラール要因〜クラブ運営・コミュニケーション〜(第IVステップ)で上昇した。これらの要因が両群の判別に効いていると推察された。4. 最後にP3とP4とが弁別された(相関比0.248,判別適中率72.1%)。5. これらの要因への働きかけが,経営管理行動としては重要になると思われる。しかし本研究ではパターン別にとるべき行動を十分に解明し得なかった。今後,各パターンの状況の違いを考慮したリーダーシップのとり方や,組織行動のあり方が検討されねばならないものと考える。以上本研究は,組織(クラブ)の環境への適応という側面を意識して進めてきた。しかし,最近,環境適応という視点よりも積極的に環境に介入していく側面を重視した経営戦略の研究が重要な焦点になっている。経営戦略と経営内特性との内的な適合性という視点をより重視して経営現象を分析しようとする研究の台頭である。今後,このような視点から競技的運動クラブ経営を検討する試みを加えていきたいと考えている。(本稿は,日本体育学会第33回大会での発表の一部に加筆修正を行ったものである。)
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© 1984 日本体育・スポーツ経営学会
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