日本平滑筋学会雑誌
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トリの大腸・総排泄腔の運動に対する壁内神経細胞の役割
福原 武内藤 富夫亀山 博子
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1974 年 10 巻 4 号 p. 257-268

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抄録

トリ(オスのニワトリ)の大腸の運動を生体内のもの, ならびに摘出したものについて研究し, 生因によって3種類に分類し, 他方壁内神経細胞の分布状態を組織学的に研究した.これらの研究によって得られた結果は次のように要約される.
1. 壁内神経細胞分布の様相は哺乳類で見られるものとは次の点で異っている.
a. 腸外神経は大腸壁内に進入した後, 所々で分枝を出す.その顕著なものは縦, 輪走両筋層間と粘膜下層において網目を作るAuerbachおよびMeissner神経叢である.神経細胞は, しかし, 結節点だけに集合することなく神経走行経路のいたるところに散在する, なお神経細胞の1cm2当りの数は大腸の口側端部では約7800であるが, その他の部位ではどこでも変りなく, 3000~4000と見積られた.
b. 糞道の最尾端部の周縁には多数(1500~2000個)の神経細胞を含む, 大きな神経節がいくつか認められた.
2. 生体内大腸では糞道の最尾端部周縁に非常に微弱な拍動が, 7.9~11.0secの周期をもって繰り返し発生し, それぞれが浅い収縮波(上行波)として1.2~1.5mm/secの速度をもって口側端にまで伝播する.
3. 生体内大腸を, 肛門に挿入したカニューレを介して, 圧力瓶に連結した後, 瓶を3cmH2Oにまで揚げると大腸がほんの短時間(約1/3sec以内)膨らされた後, 全長にわたつてほとんど同時的に強い収縮が引き起こされる.この結果として総排泄腔の内容が一部分肛門外に排出される.この運動はRemakの神経を介してひき起こされる腸外反射効果であると考えられる.そして鳥ではこれが排便運動であると考えられる.
4. 摘出大腸の内圧を3~6cmH2Oにまで高めると大腸の最口側端部に拍動が30.0~33.5secの周期をもつて繰り返し発生し, それぞれ0.9~1.2mm/secの速度をもつて尾側へ向つて伝播するが, 大腸と総排泄腔の境界部を越えると急速に減衰して消える.この事実は鳥では壁内神経細胞が大腸収縮波の強さ, および方向を規制する機能を持っていることを示唆している.この運動は, しかし, 排便運動に関しては, 脇役を演ずるにすぎないと考えられる.

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