多文化関係学
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犯罪「行為者」としての外国人の表象に関しての一考察 : メディア・フレームの中の『窃盗団』
船山 和泉
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2008 年 5 巻 p. 17-31

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抄録

本研究は日本のメディアにおける外国人の表象について分析・考察するものであり、特に犯罪報道において外国人がどのように表象されているかを検証する。本研究はコーパスの収集のために読売新聞とTHE DAILY YOMIURIを収録した新聞記事データベースである「ヨミダス文書館」を利用し、見出しにおける『窃盗団』という特定の単語の複合名詞に着目した。
分析の結果、窃盗団のメンバーが日本人であるときは、その属性としての国籍や民族名は『窃盗団』の複合名詞を形成することはなくまた見出しに登場することもない一方で、日本人ではない者が窃盗団のメンバーである時には、「中国人窃盗団」などの例に顕著に見られる様に、彼等の国籍や民族名はほぼ必ずと言って良いほどの割合で『窃盗団』の複合名詞を形成し見出しに登場することが明らかとなった。つまり窃盗団に関する報道であるということは同じであっても、外国籍の者が窃盗団のメンバーである場合に彼等は必ずと言って良い程の割合で窃盗の行為者として表象され批判の対象となるが、窃盗団のメンバーが日本人である場合は、その限りではない。例え現実では行為者であっても、多くの場合彼等の窃盗団は「重機窃盗団」などといった、行為者のアイデンティティーを明らかにしない形で表象されるのである。
本研究によって、メディア・テキストにおいて窃盗という犯罪行為の「行為者」として言及されその責任を問われるか否かは、当事者が当該社会・コミュニティーにおいてアウトサイダーであるか否か、そしてしばしば社会的マイノリティーであるか否かによって差がある、ということが示唆された。

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