本研究は、日本人成人4 名を調査協力者としPAC 分析を用いて、社会改革(社会制度・行政サービスの整備への直接的/間接的働きかけ)の阻害要因および促進要因について、主観的格差感との関わりを交えながら探索・検討していくことを目的とする。調査の結果、阻害要因として(1) 主観的格差感(-)の責任を自己に帰する、(2) 多数決による決定、(3) 承認者(マジョリティ)―被承認者(マイノリティ)という不均衡な関係の固定化、 (4) 無自覚な優位性および規範的ステレオタイプの4 点を見出した。促進要因としては(1) 主観的格差感(-)の責任を社会に帰する、(2) 差異/優劣を規定する基準を問い直す、(3) 他者志向動機・互恵意識・身近な人々との協働、(4) 時代の波の4 点を示した。メインストリームにおいてマイノリティとマジョリティが対峙している状態では社会改革(メインストリームにおけるマイノリティの承認/包摂の獲得)は難航しがちであるが、メインストリームの価値基準に固執せず、新たな生き方を選択・実践していくことが改革の契機となることがみえてきた。今後の社会改革の進展は、メインストリームの内外を問わず、人々とりわけマジョリティが抱く違和感をメインストリームの規範から外れた逸脱と捉えるか、多様な選択肢の一つとして新しい社会的現実の一歩と捉えるか、その判断・解釈に懸かっていると考えられる。
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