本研究の目的は、大学学生寮の中で留学生と日本人学生が構築する対人関係を、留学生の語りを通して明らかにすることである。データ収集方法として、有志留学生8名それぞれに滞在期間3ヶ月目と8ヶ月目の時点で半構造化面接を行なった。面接では、寮での日本人学生との対人関係を中心に質問をした。逐語録の分析には、木下(2007)を参考に、グラウンディッド・セオリー・アプローチで用いられる方法を利用した。その結果、滞在期間3ヶ月目では、留学生は日本人学生との対人関係構築への期待を抱いていたのにも関わらず、8ヶ月目になると、留学生は日本人学生コミュニティへの不参加を表明していることが分かった。本稿では、その理由として、日本人学生の上下関係の文化的実践に注目し、寮における異文化間対人関係の様相を考察する。